診療支援
治療

リンパ浮腫
Lymphedema
森村 壮志
(国際医療福祉大学准教授)

病態

【頻度】原発性リンパ浮腫は10~20歳代に好発する.続発性リンパ浮腫は乳癌術後,子宮頸癌術後,放射線治療後などが原因となる.高齢者の女性で発症頻度が高い.

【病因・発症機序】体内には動脈や静脈などの血管のほかにリンパ液を流すリンパ管とよばれる管がある.リンパ液は蛋白質や白血球などを含み,感染に対して防御する働きをもつ.毛細血管の主に動脈側から出た水分や蛋白質は,組織に栄養を配給してから再度リンパ管や静脈に回収される.その際に90%以上は静脈に還流するが,残りの10%はリンパ管に還流される.リンパ液の循環障害で浮腫が生じることをリンパ浮腫とよぶ.リンパ浮腫は,原発性と続発性に分類される.原発性のリンパ浮腫は家族性と非家族性に分類される.原発性リンパ浮腫は胎生期の異常から生じ,血管内皮細胞増殖因子の受容体異常が原因とされる.続発性リンパ浮腫は,癌,手術,放射線治療,外傷などが原因となり,リンパ浮腫が発症する.特に乳癌や子宮癌,卵巣癌の手術後は,癌の転移を考慮して,リンパ節郭清をすることによって,多くのリンパ管が集合してくるリンパ節を切除するため,リンパ管内でリンパ液がうっ滞し,リンパ管浮腫が高頻度に起こる.

【臨床症状】初期は一過性の浮腫,のちに持続性になり,浮腫が著明になり,圧痕を残し,線維化や硬化も伴う(図13-15)

【合併症】①lymphedema-related acute dermatitis:急激な高熱,ふるえ,局所の熱感,紅潮,痛みで発症し,数日で自然に治る.皮膚表面の非病原性のバクテリアに対する浮腫組織の異常な免疫反応と考えられ,リンパ浮腫患者の半数に認められる.②真菌感染:リンパ浮腫の1/3に認められる.浮腫により指が接着し,湿潤することで真菌感染が発症しやすくなる.③象皮症:lymphedema-related acute dermatitisと合併

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