Ⅰ 肢端紫藍症
病態
皮膚の温度低下に伴う循環不全よりチアノーゼ様の色調異常で,好発部位は手,足,顔である.多汗症を伴うことが多い.
病態としては,気温が低下すると終末細動脈が収縮するが,毛細血管系の反応が遅れるため,皮膚表面は還元ヘモグロビンが増加して紫色に見える.自律神経系の調節異常が関与し,凍瘡,網状皮斑,発汗異常を伴うことが多い.
【頻度】女性に多く,思春期から成人期が好発年齢である.手足に好発し,寒冷曝露により誘発される.
【臨床症状】手足,顔が寒冷刺激に曝露したときに紫色に変色する.
【鑑別疾患】チアノーゼをきたす循環器系疾患や血液疾患などである.
治療
凍瘡の治療は効果が乏しく,ニコチン酸やサリチル酸の外用薬,ステロイド外用薬などが使われる.
Px処方例 下記のいずれか,または適宜組み合わせて用いる.
1)ユベラN薬カプセル(100mg) 1回1カプセル 1日3回
2)ユベラ薬軟膏 1日2回 塗布
3)アンテベート薬軟膏 1日2回 塗布
Ⅱ 肢端紅痛症
運動による発熱や温熱刺激により,肢端の皮膚が焼けるような痛みと,血管拡張による発赤,熱感を突然きたす疾患である.原発性と続発性に分けられる.
a.原発性肢端紅痛症
病態
原発性肢端紅痛症は,低酸素による疼痛と末梢血管の弛緩による発赤が同時に起こり,器質的な病変を認めない.32~37℃くらいのやや低温により惹起される.ほかに運動や激情に対して発赤や熱感,痛みを突然きたす.本疾患は,温度に対して異常な知覚をもっていることが想定され,温熱刺激によるセロトニンの放出も認められる.
【頻度】①家族性または先天性で優性遺伝すると考えられている.②好発部位は両手,両足,下腿である.
【臨床症状】小児期から発症し,両側性である.持続時間は数分~1時間ほどだが,発作が起きたあとは同じ刺激でも発作が起きにくい.発作時は発赤や熱感,腫脹,多汗,過敏な皮膚感覚が
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