病態
単純ヘルペスウイルス(HSV)感染により皮膚・粘膜に水疱,びらん病変をきたすウイルス感染症.主として,口唇や性器に病変を作るが,脳炎,肺炎など内臓病変をきたすこともある.抗ヘルペスウイルス薬による治療が可能である.
【頻度】①実数は不明だが,性器ヘルペスの本邦での1年間の症例数は男22,000人,女52,000人の計74,000人と推定されている.また,日本人成人のHSV-1の抗体保有率は60~70%,HSV-2では10%程度とされているが,年々低下傾向にある.②性器ヘルペスは,感染症法における定点報告対象(5類感染症)であり,指定届出機関(全国約1,000か所の泌尿器科,産婦人科などの性感染症定点医療機関)は月ごとに保健所に届け出なければならない.
【病因】①HSVによる初感染もしくは再活性化による.HSVには1型と2型があり,HSV-1は主として口唇ヘルペスの,HSV-2は主として性器ヘルペスの原因となる.初発,再発,また発症部位や臓器によりさまざまな病態が存在する(表26-1)図.②HSVは唾液や性交渉を介した接触感染により初感染をきたしたあと,三叉神経,仙髄神経などの知覚神経節に潜伏感染する.感冒,紫外線照射,性行為や精神的ストレスによりウイルスが再活性化すると,知覚神経を順行性に移動し,支配神経領域の皮膚・粘膜に再発病変を形成する.
【臨床症状】①初感染:2~10日間の潜伏期を経て,感染部位である口唇,口腔粘膜や外性器に痒みや違和感を伴った直径1~2mmの有痛性の複数の水疱が出現する.口腔内の初感染の場合,感染範囲が広く,ヘルペス性歯肉口内炎の像をとる.痛みが強く,摂食不良の原因となる.第3~5病日から水疱は破れて融合し,円形の有痛性の浅い潰瘍となり,痂皮化して治癒する.性器ヘルペス初感染では所属リンパ節腫脹を伴い,痛みも強いことが多く,排尿障害をきたすことがある
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