診療支援
治療

尋常性毛瘡
Sycosis vulgaris
大野 貴司
(医療法人洋友会中島病院皮膚科)

病態

 成人男性の須毛部に生じる亜急性,慢性の深在性毛包炎である.硬毛一致性の紅斑を伴う丘疹,膿疱を形成する(図27-7).病変は集簇,融合し多発病変を形成する.病変はやがて凹凸のある紅斑,腫脹病変となる.剃毛時に灼熱感,疼痛を伴う.時に湿疹病変を伴う.起炎菌は黄色ブドウ球菌,表皮ブドウ球菌が多い.

【病因・発症機序】髭剃りなどによる毛包の微小外傷,角層の浸軟,ステロイド外用などが誘因となり毛包に感染を生じ,炎症が起こる.


診断

 男性の須毛部に毛包一致性の丘疹,膿疱を形成し,慢性の経過をたどり,次第に深在性病変となり,融合した紅色の浸潤性病変を形成する.瘢痕形成,脱毛は通常認めない.髭剃りの回数,使用する剃刀の種類,ホルモン剤,ハロゲン化薬,分子標的薬の使用歴,ダイオキシンや機械油などとの接触歴を確認する.

【鑑別診断で想起すべき疾患】

1.白癬菌性毛瘡

 須毛部に紅色丘疹,膿疱を認め,滲出液,痂皮を伴う.病変は融合し膿瘍を形成する.感染部の硬毛は疼痛なく容易に抜毛が可能となる.周囲に鱗屑を伴う環状紅斑を伴うこともある.2次感染を伴うと所属リンパ節の腫脹を認める.鱗屑と抜いた毛の直接鏡検で菌糸を確認する.真菌培養で菌種を同定する.

2.尋常性痤瘡

 思春期の男女に好発する.好発部位は顔面,前胸,背部で毛包一致性の丘疹,膿疱が多発する.尋常性痤瘡では,顔面で頰部,前額部など須毛部以外の病変を伴う.また毛孔の白い閉鎖面皰,黒い開放面皰がみられる.

3.須毛偽毛包炎(pseudofolliculitis barbae)

 剃毛後に顔面,頸部に炎症を伴う丘疹が再発する.剃られた毛の鋭い先端が隣接する皮膚に刺入して生じる.膿疱を伴うこともある.瘙痒や刺激感を伴い,炎症後色素沈着を残し,ケロイドとなることもある.


治療

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

(軽症例)

1)アクアチムクリーム 1日2回 単純塗

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