診療支援
治療

トキシックショック症候群(TSS),新生児TSS様発疹症(NTED)
Toxic shock syndrome:TSS,Neonatal toxic-shock-syndrome-like exanthematous disease:NTED
伊藤 周作
(日立総合病院主任医長)

病態

 TSS,NTEDともに黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureusが産生する毒素(主にTSST-1:toxic shock syndrome toxin-1,ほかにSE:staphylococcal enterotoxin)を原因とする.これらの毒素は,特異抗原に比べ非常に多くのT細胞を活性化することからスーパー抗原とよばれている.TSST-1は抗原提示細胞上のclassⅡ分子に結合し,さらにT細胞レセプター(TCR:T cell receptor)のVβ領域に結合することで,特定のVβを発現する膨大な数のT細胞を一気に活性化させる.これにより大量のサイトカインが産生され,このサイトカインの影響で他の免疫担当細胞からもサイトカインが産生されサイトカインストームの状態となり発症する.TSST-1やSEに直接的な細胞傷害性はない.

 TSSは発熱,血圧低下や多臓器不全などをきたし死亡率が約3%とされる.以前はタンポンを使用する若い女性が多かったが,最近は分娩産褥期や術後の創部感染などによるものが多い.NTEDは,正期産児では発熱と皮疹のみで多臓器不全を呈することはほとんどなくTSSに比べ予後良好だが,早産児では時に重症化する.新生児は常在菌をもたずに出生するため,黄色ブドウ球菌が定着しやすく感染巣が明らかでなくても発症する.母体の抗TSST-1抗体の保有率低下が,NTEDの増加の一因と考えられている.

【臨床症状】TSSでは皮疹に加え,血圧の低下など全身症状が前面に出る.発熱,頭痛や筋肉痛,全身倦怠感で始まり,続いて下痢や嘔吐,さらに皮疹とともにショックや失見当識,腎障害や肝障害などの多臓器不全を呈するようになる.皮疹は,触るとひりひりとした痛みを伴う日焼け様紅斑が有名だが,全身のびまん性紅斑や点状の紅斑が多発し融合することもある.治療とともに紅斑は1~2日で軽快

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