診療支援
治療

トキシックショック様症候群
Toxic shock-like syndrome:TSLS
多田 讓治
(光生病院皮膚科)

病態

 A群β溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes, S.pyogenes)による上気道感染・創傷感染などに続発して,敗血症,壊死性筋膜炎・筋炎を併発し,急激にショック症状・多臓器不全に陥る重篤な疾患である.黄色ブドウ球菌によるトキシックショック症候群(TSS:toxic shock syndrome)と同様な病態となることから,トキシックショック様症候群(TSLS:toxic shock-like syndrome),あるいはレンサ球菌性(streptococcal)TSS(STSS)とよばれるが,メディアでは「人食いバクテリア」として取り上げられたこともある.本邦では劇症型溶血性レンサ球菌感染症ともよばれている.B群,C群,G群レンサ球菌による発症も報告されている.

【頻度】国立感染症研究所感染症疫学センターの統計では,2000年に44例,2010年に122例,2015年には415例と近年増加傾向にある.2018年には694例が報告され,男性364例・女性330例,20歳未満は24例,65歳以上が455例を占めている.5類感染症に分類され,診断後7日以内に最寄りの保健所に届け出なければならない.壊死性筋膜炎はTSLSの一症状であるが,その合併頻度は30%以上である.

【病因・発症機序】発症機序はなお不明であるが,菌体表層成分であるM蛋白とスーパー抗原性をもつ外毒素(Streptococcal pyrogenic exotoxin A,B,Cなど)によるとされている.レンサ球菌が血液中で放出するM蛋白がフィブリノーゲンと複合体を作り,それが好中球表面に付着して好中球が活性化し,血管内皮細胞が障害され,結果的に血管透過性亢進・凝固過剰となりTSLS特有の症状が惹起されると考えられる.

【臨床症状】壮年期以後に好発し,多くは基礎疾患をもたない.悪寒,発熱,咽

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