病態
ネコによる創傷や咬傷が原因で発症するBartonella henselaeの感染による人畜共通感染症である.
【頻度・疫学】B.henselaeは世界中に分布していて,欧米,日本,豪州,ニュージーランドなどからの報告がある.本邦に比較し欧米で圧倒的に多く,米国では年間20,000例の発症があり,2,000例が入院する.夏から秋に多くみられる.夏の繁殖期後,秋に子ネコが増加するためとみられている.バルトネラ感染症は小児に多いと考えられていたが,成人の報告も増加している.
【病因】グラム陰性小桿菌であるB.henselaeによる.バルトネラ属は内皮細胞や赤血球などの哺乳類細胞に固着し,侵入することができる.臨床症候としては,ネコひっかき病,オロヤ熱,ペルー疣贅,心内膜炎,細菌性血管腫症など多様である.
【臨床症状】①定型的にはネコ(子ネコ)にひっかかれたり,ネコとの接触により皮膚,あるいは結膜に初発病変を形成する.受傷3~5日後に,受傷部に紅色丘疹,小水疱が出現し,膿疱化したり,潰瘍になることもある.局所病変は1~3週間続く.受傷1~3週間後に所属リンパ節の有痛性の腫脹が認められる(図27-26)図.鼠径部,腋窩,頸部に多くみられる.初期には圧痛があり,その後は波動性となり,排膿することがある.発熱,全身倦怠感,頭痛を伴うことがある.リンパ節腫脹は数週間~数か月持続する.一般に自然治癒傾向を示す.②非典型的症状は不明熱,肝脾臓病変,Parinaud症候群,眼瞼性結膜炎,脳炎,骨溶解性病変,心内膜炎など多彩である.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】化膿性リンパ節炎,非結核性抗酸菌症,スポロトリコーシス,野兎病,トキソプラズマ症,伝染性単核球症,腫瘍,サルコイドーシスなどが挙げられる.
【診断のために必要な検査】①血清診断:B. henselaeに対する抗体測定には酵素抗体法と間接蛍光
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