病態
白癬菌の皮膚への感染で生じる.顔面を含め,手背,足背,生毛が生じている部分の白癬を体部白癬といい,特に湿度が高く難治となることがある外陰部とその周囲を股部白癬という.欧米では他疾患との誤診の注意喚起のために顔面白癬(tinea faciei)と分けている.
【病因・発症機序】白癬菌は大きく,好ヒト性菌,好土壌性菌,好獣性菌に分かれる(表28-1)図が,好ヒト性菌以外では一般に炎症症状が強い.爪白癬がありステロイド外用によって体部白癬が顕在化することもある.臀部,鼠径部など高湿度の部位に好発する.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】①環状紅斑を呈する疾患が挙がる.貨幣状湿疹,多形紅斑,乾癬,固定薬疹,環状肉芽腫,カンジダ性間擦疹,癜風,菌状息肉症(皮膚T細胞リンパ腫),家族性良性慢性天疱瘡などが挙げられる.
【特徴的な皮疹】丘疹,小水疱,鱗屑を伴う境界明瞭な環状紅斑として初発し,辺縁は堤防状に隆起し遠心性に拡大,弧状,連圏状を呈する中心治癒傾向の紅斑(図28-4)図.
【問診で聞くべきこと】①足や爪白癬の有無.糖尿病など背景となる疾患がないか.外用一般用医薬品を含めたステロイド薬外用歴,海外渡航歴.②インドをはじめとした海外で,テルビナフィン耐性菌の報告が出てきており注意を要する.③ペット〔ネコ,イヌ,げっ歯類(ウサギ,デグー),ハリネズミなど〕の飼育歴.④本人と家族の格闘技歴.
【診察すべき部位】①KOH直接鏡検で白癬と診断した場合,まず足白癬の有無,手足の爪白癬の有無を確認すべきである.②格闘技関連であれば必ず頭皮の診察を行う.③動物由来を考えるときには,前腕,顔などの露出部位に注意する.
【必要な検査とその所見】①直接鏡検にて真菌要素を検出する.皮疹の炎症症状が強いときには好土壌性および好獣性を疑い培養を行う.感染源の特定には病原菌の培養が重要である.②格闘技歴がある場合は全身
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