わが国内での生息が確認されておらず,侵淫地域が海外の特定地域に限局されている真菌症を輸入真菌症とよんでいる.この概念に含まれる疾患としてはヒストプラズマ症,コクシジオイデス症,マルネッフェイ型タラロミセス症(ペニシリウム症),パラコクシジオイデス症などがある.
わが国の輸入真菌症発生状況については,千葉大学真菌医学研究センターウェブサイト(http://www.pf.chiba-u.ac.jp/clinical/mycosis.html)を参照されたい.
輸入真菌症原因菌は一般に感染力が強く,特に免疫低下宿主では全身播種をきたしやすいが,免疫正常者にも感染症を起こしうることが知られている.一方で全身症状などは非特異的所見が多く,特徴的な症候に乏しい.すべての輸入真菌症に共通して,診断に至る最も重要な手掛かりは患者の渡航歴である.
輸入真菌症の皮膚病変からの採取検体の病理組織学的検査は診断にきわめて有用であるが,培養検査を行うことで医療機関や委託検査機関における感染事故を引き起こす可能性があるので注意が必要である.必要に応じ,国内専門機関(国立感染症研究所真菌部,千葉大学真菌医学研究センター臨床感染症分野)にコンサルテーションを行うことが可能である.各疾患の主な皮膚粘膜病変を表28-2図に示す.
Ⅰ コクシジオイデス症
病態
原因菌は北米(アリゾナ州,カリフォルニア州南部,ネバダ州,ニューメキシコ州など)のほか,中南米諸国に散発的に生息している.コクシジオイデス症の診断のためにはこれらの流行地域への渡航歴,滞在歴を詳細に聴取することが重要である.真菌として最も感染力が強く健常者にも容易に感染する.吸入による気道感染を起こし,まず肺に病巣を形成する.感染成立後1~数週間でインフルエンザ様の症状を呈し(valley feverとよばれる),数週間あるいは数か月間症状が持続したのち自
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