病態
ヒトを終宿主としない寄生虫の幼虫が,成虫になれないまま皮膚を爬行して特徴的な線状爬行疹(creeping eruption)を生じる疾患.原因寄生虫の種類により分類される.
【同義語】皮膚幼虫爬行症,皮膚幼虫移行症(cutaneous larva migrans).
【頻度】頻度は高くないが,原因寄生虫の種類や地域により異なる.また,食嗜好の多様化による再興感染症としての側面や,流行地への海外渡航後に発症する輸入感染症の側面もある.
【病因・発症機序】原因となる寄生虫には,顎口虫や旋尾線虫,動物由来の鉤虫類やManson裂頭条虫の幼虫(Manson孤虫症)などがある.これらの寄生虫の幼虫は,中間宿主や待機宿主(例:顎口虫ではライギョやボラ,ドジョウ,シラウオなど,旋尾線虫ではホタルイカ,スルメイカやハタハタなど,Manson裂頭条虫ではニワトリ,ヘビ,カエル,スッポンなど)に寄生しているため,魚類,両生類,爬虫類の生食により幼虫が胃壁から体内へ侵入し,皮膚へ迷入し移動する際に皮疹を生じる.ブラジル鉤虫など,流行地の砂浜を裸足で歩行し経皮的に感染するものもある.
【臨床症状】原因となる感染機会の数週~数か月後に,幼虫が爬行した痕跡として,特徴的な線状の爬行疹を生じる(図30-3)図.爬行疹は移動,出没を繰り返し,水疱や紅斑,腫脹および移動性の皮下腫瘤を伴うこともある.ほかの臓器症状を伴うことはまれである.
診断
【検査とその所見】①皮疹の進行先進部から広範囲に切除した検体の病理組織検査にて虫体の断面を確認できることがあるが,虫体は数mmにすぎず移動速度も速いため,実際には取り逃すことが多い.虫体の検出に超音波やダーモスコピーが有用との報告もある.②一般採血では炎症反応の上昇や,好酸球高値,IgE高値などが参考になる.ELISA法による寄生虫抗体検査や皮内反応は,交差反応も多い.
【問
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