片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛に代表される一次性頭痛は治療が必要かつ治療可能な脳神経疾患です.病態の理解も進み,治療の選択肢も増えており,標準的な診断と治療に関する情報も増加してきました1~3).一方,標準的な治療では十分な改善が得られず,就業,社会生活の継続に支障をきたしている患者さんも多く存在します.これらの患者さんは病状,病態,治療選択肢について十分な情報を得ることができず複数の医療機関を受診しさまよっている現状です.本項では,難治性の頭痛性疾患の治療における説明と同意の手順を示しました.
“治療の難しい頭痛”には,①慢性片頭痛,②薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛),③慢性群発頭痛などが知られています1~3).図1図のように,これらの頭痛は,通常,毎月の15日以上の日数と頻度で頭痛が起こり,数か月から年余にわたる頭痛であり,慢性連日性頭痛とよばれることもあります.また,頭痛の頻度,持続時間から患者さんの日常生活に多大な支障をきたすことが知られています.診断には国際頭痛学会の診断基準2)を用いて行い,二次性頭痛の否定のために頭部MRIなどの画像検査や脳波検査,血液検査などが必要となる場合があります.
その治療には,十分に時間をかけた病状,治療方法の説明が必要であり,具体的な治療の選択肢とそのエビデンスについては「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」を参考にします1).また患者さん自身も,自分の頭痛について十分に理解することが治療上重要であり,「慢性頭痛の診療ガイドライン市民版」を活用します2).
難治性の一次性頭痛のなかでも,特に治療にかかる時間,期間が長期になる,慢性片頭痛,薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛),慢性群発頭痛について簡潔に解説します.
1.慢性片頭痛1~3)
1)現在の病状・病態
片頭痛は日本では年間有病率は6~8.4%と頻度の高い疾患で3,4)