診療支援
検査

遺伝学的検査の概念と倫理的手続き
滝 智彦
(杏林大学教授・保健学部臨床検査技術学科)

Ⅰ.遺伝情報は重要な医療情報である

 遺伝情報についての以前の考え方は,漏洩した場合に不利益を被る可能性がある重要な個人情報として,他の医療情報とは区別して扱うべきというものであった.遺伝情報が適切に扱われなければならない情報であることは現在でも変わりはない.しかし同時に,遺伝情報は全身の細胞で共通という臓器横断的な情報であり,重要な医療情報の1つである.また,現在の血縁者だけでなく,将来の血縁者にも共有されうる情報でもある.そのため,近年,遺伝情報は診療科間および医療従事者間で患者のプライバシー保護に十分に留意する形で適切に共有され,長期間保持される必要がある情報であると考えられるようになってきた.2022年3月に公表から11年ぶりに初めて改訂された日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」(以下,医学会ガイドライン)1)も,そのような趣旨に沿って記載内容が変更された

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