診療支援
検査

検査計画の進め方 高齢者の検査計画
荒木 厚
(東京都健康長寿医療センター副院長)

 日本の高齢者人口は増加し,2021年の国勢調査では65歳以上の高齢者は全体の29.1%を占め,世界一の高齢化率を示している1).75歳以上も15.5%となっており,小児科,産科を除くすべての診療科が高齢者を診療する時代となっている.しかしながら,検査を進めていくうえでは高齢者は成人とは異なる特徴があることを念頭においておく必要がある.


Ⅰ.高齢者の定義


 一般に65歳以上を高齢者としている.これまで65~74歳を前期高齢者,75歳以上を後期高齢者,85歳以上を超高齢者と分類されてきた.しかし,75歳以上のほうが身体機能や認知機能が低下しやすいことや高齢者の身体機能などが以前と比べて若返っていることから,日本老年医学会から65~74歳を准高齢者,75~89歳を高齢者,90歳以上を超高齢者とするという提言が出されている(2017年).今後,高齢者の定義はさらに議論されていくことが予想される.


Ⅱ.高齢者の特徴


 表49に高齢者の特徴を示す.高齢者では加齢または疾患の合併により,多くの臓器の機能は低下する.特に腎機能や肝代謝の低下により,薬物の有害事象をきたしやすい.また,臓器の予備能の低下により,身体的ストレスが加われば要介護や死亡に陥りやすいという「フレイル」になりやすい.ただしフレイルは健康と要介護の中間であり,食事や運動によって健康に戻る可能性がある.

 加齢に伴って,体組成が変化し,骨格筋量や骨密度は減少し,脂肪量,特に内臓脂肪量は増加する.したがって,サルコペニアや骨粗鬆症になりやすい.

 また,高齢者,特に後期高齢者では認知機能が低下し,フレイル,サルコペニア,ロコモティブシンドロームをきたしやすく,転倒,要介護,死亡のリスクが高くなる.

 高齢者の疾患は症状が欠如したり,非典型的であったりすることが多い.多くの疾患を合併したmultimorbidity(多疾患罹患状態)のこ

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