診療支援
検査

ペプシノゲンⅠ
pepsinogenⅠ
片倉 芳樹
(あおば胃腸内科クリニック院長)
四柳 宏
(東京大学医科学研究所教授・先端医療研究センター感染症分野)

基準値 15~100ng/mL


測定法 IRMA法


検体量 血清0.3mL


日数 3~6日


目的 ①胃粘膜萎縮の指標,②胃癌のスクリーニング


Decision Level

●15ng/mL以下(低値)

[高頻度]悪性貧血,萎縮性胃炎,胃腺腫,胃癌,肝硬変,胃切除後 [可能性]胃黄色腫 [対策]上部消化管X線検査,内視鏡検査,画像診断

●100ng/mL以上(高値)

[高頻度]胃・十二指腸潰瘍,Zollinger-Ellison症候群,腎不全,急性胃粘膜病変,プロトンポンプ阻害薬(PPI)服用 [可能性]Brunner腺腫 [対策]上部消化管X線検査,内視鏡検査,血中ガストリン測定,画像診断,検尿,腎機能検査,PPI中止


異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 ペプシノゲンは胃液中の蛋白分解酵素ペプシンの不活性前駆体で胃内の塩酸分泌をつかさどる.ペプシノゲンⅠは胃底領域の主細胞で分泌される.胃粘膜内で産生されたペプシノゲンの1%が血中に流入する.

 胃粘膜内での産生亢進により高値を呈するが,腎機能低下時も腎からの排泄が減少し高値をとる.胃粘膜内での産生低下により減少し,胃切除後は粘膜量が減るため低下する.

 ペプシノゲンⅠの高値は消化性潰瘍の存在を考えさせるが,潰瘍の再発性・難治性の判定にも役立つ.低値の場合は胃粘膜の萎縮の有無と程度の判定に役立つ.萎縮性胃炎は胃癌のハイリスク群と考えられることから,検診のスクリーニングにもペプシノゲンⅠおよびⅠ/Ⅱ比が使われている.また,Helicobacter pylori陽性時には,陰性時よりも有意に高値を示す.


[関連する検査]

①ペプシノゲンは胃液中の蛋白分解酵素であるペプシンの不活性型前駆体であり,免疫学的にペプシノゲンⅠ,ペプシノゲンⅡに分けられる.②ペプシノゲンⅠは胃底腺領域に存在し,ペプシノゲンⅡは胃底腺のほか,噴門腺,幽門腺および十二指腸腺に存在する.胃

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