異常値のでるメカニズムと臨床的意義
●臨床的意義
甲状腺ホルモンの過剰・不足は代謝・循環器・精神機能など全身に大きな影響を及ぼすが,自・他覚症状が非特異的であるため見逃されやすい.甲状腺疾患は頻度が高く治療法も確立しており検査を行えば診断は比較的容易なので,甲状腺の視診・触診・問診を日常的に行うことにより積極的に見いだしていくアプローチが必要で,ヨードの日常的過剰摂取の確認は問診のポイントである.甲状腺疾患の既往歴・家族歴,自己免疫疾患,リチウム・アミオダロン・GnRH誘導体・分子標的治療薬(ニボルマブ,スニチニブなど)の薬物治療,頭頸胸部放射線治療の既往などがある場合はハイリスク群として定期的検査が必要である.また,妊娠中の甲状腺ホルモンの過剰・不足が妊娠経過・児の発育発達に影響する可能性があるため,特にハイリスク群では妊娠前の検査が推奨される.①甲状腺ホルモンの過剰・不足は遊離サイロキシン(FT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)により判定する.遊離トリヨードサイロニン(FT3)もT3中毒症などでは有用.FT4とTSHとは通常,逆相関関係にあるが,そうでない場合は視床下部下垂体など中枢の異常を考慮する.FT4上昇+TSH抑制はBasedow病以外でも認められるのでTSH受容体抗体検査などの病因診断が必要である.②サイログロブリンは臓器特異性が高く甲状腺分化癌治療後の経過観察マーカーとして有用だが,疾患特異性が低いので良性疾患との鑑別には適さない.甲状腺ホルモンの誤用による中毒症の診断に有用.③抗サイログロブリン抗体・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体は自己免疫性甲状腺疾患の診断,甲状腺機能低下の予後予測に有用.④TSH受容体抗体は甲状腺ホルモン過剰の病因診断上重要であり,また,Basedow病の治療経過観察,ブロッキング抗体による甲状腺機能低下症の診断,甲状腺眼症の診断,胎児・新
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