診療支援
検査

糞便中ロタウイルス抗原,糞便中アデノウイルス抗原(40,41型)  
rotavirus antigen,adenovirus antigen(type 40,41)
長尾 美紀
(京都大学大学院医学研究科教授・臨床病態検査学)

基準値 陰性


測定法 イムノクロマト法(ICA)


検体量 糞便(拇指頭大)1g


日数

・院外検査:2~8日

・院内検査:10分


目的 乳幼児下痢症の原因病原体の鑑別


NOTE‍ 保険点数:65点(ロタウイルス抗原定性・定量),60点(アデノウイルス抗原定性)


Decision Level

●陽性

[高頻度]乳幼児下痢症 [対策]ラテックス凝集法は電顕法に比べ感度がやや劣る


異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 ロタウイルスおよび,アデノウイルスは,乳幼児下痢症の主要な起因ウイルスである.

 ロタウイルスは,抗原特異性でA~G群に分類され,ヒトからはA~C群が検出される.A群ロタウイルスは,母体からの移行抗体がなくなる生後6カ月~2歳半くらいの乳幼児に冬~春先に好発する下痢症を起こす.潜伏期2~3日後,白色水様下痢,嘔吐,発熱で発症し,1週間以内に回復する.A群ロタウイルスは,外殻糖蛋白が2種類(VP7およびVP4)存在し,抗原性の相違によりそれぞれG血清型,P遺伝子型を規定している.B,C群ロタウイルスは,非定型ロタウイルスとして注目されているが,B群は日本での発生は報告されていない.C群は児童~成人まで広く分布し,季節による発生の差はない.

 アデノウイルスは,54の血清型に分けられ,下痢症を起こす型として,1,2,3,4,7型などが,分離,同定されてきたが,便中(エンテロ)アデノウイルスとして難培養性の40,41型が世界中から報告されている.

 本検査は,糞便中のA群ロタウイルスおよびアデノウイルス抗原をヒトアデノウイルスの群共通抗原に対する抗体を用いて,免疫学的方法で検出するものであり,細菌性胃腸炎と鑑別することにより,感染対策や治療方針の決定に有用である.


判読

 検出限界があることに留意する.ICAはA群ロタウイルス特異抗体を用いており,B,C群ロタウイルスの検出はできない.


採取保存

 凍結保存.

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