診療支援
検査

日本脳炎ウイルス抗体   79点
Japanese encephalitis virus antibody
森兼 啓太
(山形大学医学部附属病院検査部長)

基準値

●CF 血清4倍未満,髄液1倍未満

●HI 血清10倍未満,髄液10倍未満


測定法 CF,HI


検体量 血清0.2~0.5mLまたは髄液0.4~1.0mL


日数 3~7日


目的 ①日本脳炎ウイルスの感染の診断,②ワクチン有効性の評価


Decision Level

●高値

[高頻度]日本脳炎あるいは他のフラビウイルス感染症 [対策]PCR法による髄液中のウイルスRNAの検出


異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 日本脳炎ウイルスは,フラビウイルス科フラビウイルス属で,直径40~60nmの球状の1本鎖RNAウイルスである.媒介節足動物はコガタアカイエカ,ウイルス増幅動物はブタであり,吸血性節足動物で媒介されるアルボウイルスとしての伝播形式である.

 ヒト(終末宿主)は,ウイルスを保有した蚊に刺されて感染するが,蚊の感染源とはならず,ヒトからヒトへの感染はない.ヒトにおける感染者の大部分は不顕性であるが,発症すると高熱・頭痛・意識障害を三主徴とする急性脳炎となり,致命率は高く(25~50%),回復者も約50%で,精神・神経障害を伴う後遺症が認められる.

 ワクチン接種と社会環境の変化により,わが国での患者発生数は少ないが,東南アジアを中心とする地域に広く分布していることから,輸入感染症としての注意が必要である.

 予防法は高度精製不活化ワクチン,治療はもっぱら対症療法である.


[関連する検査]

①日本脳炎ウイルスの感染の診断に関する他の検査値の異常として,末梢白血球数の軽度上昇がみられる.②急性期に無菌性膿尿,尿潜血,尿蛋白を伴うことがある.③髄液所見では髄液圧は上昇し,髄液細胞数は,初期に多核球優位,その後リンパ球優位となる.髄液中の蛋白軽度上昇がみられる.


判読

①一般的に単一血清でも高値を示す場合,診断的価値がある.ただし,不顕性感染やワクチン接種による抗体獲得がある.②ペア血清での有意上昇で確定.③

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