基準値 検出なし
測定法 顕微鏡観察
検体量 糞便1g程度(蟯虫にはセロファン膜)
日数 1~2日
目的 感染寄生虫の検索
NOTE *保険点数:15点〔虫卵検出(集卵法)〕,20点(糞便塗抹顕微鏡検査),40点〔虫卵培養(糞便)〕.糞便塗抹顕微鏡検査の受託は,現在,複数の検査会社が中止しているが集卵法で代用できる
Decision Level
●1つでも虫卵が検出されれば異常である
[高頻度]検出された虫卵を産む蠕虫に感染している [可能性]誤認による偽陽性の場合もありうる [対策] 薬物治療(駆虫,対症療法)を行う.有鉤条虫の成虫感染の場合には,ガストログラフイン®で駆虫する選択肢もある
異常値のでるメカニズムと臨床的意義
虫卵が糞便中から検出される機序は,①消化管などに雌の成虫(回虫,鉤虫,糞線虫など)または雌雄同体の成虫(広節裂頭条虫,日本海裂頭条虫,肝吸虫など)が寄生して産卵,②寄生虫が肺に寄生して産卵,患者が痰を飲み込み,これが食道から腸管へ至る(肺吸虫),③寄生虫が門脈に寄生して産卵,その卵により腸管の血管が塞栓し,壊死を起こした腸管粘膜の脱落とともに虫卵が消化管に出る(日本住血吸虫),などである.ヒトが中間宿主になる場合(有鉤嚢虫,エキノコックスなど)や幼虫移行症(アニサキス,顎口虫,宮崎肺吸虫など)では,虫卵が排出されない.
ヒトに感染する蠕虫の虫卵が1つでも見つかることは,感染の存在を強く疑わせるという臨床的意義がある.しかし,感染の重症度は虫卵の数(ストール法で測定)と相関するとは限らず,個々の寄生虫症ごとに状況が異なる.
[関連する検査]
①虫卵数が多い場合(広節裂頭条虫,日本海裂頭条虫など)には直接塗抹法で検鏡する.②虫卵が少ない場合(肺吸虫,住血吸虫など)には,集卵法(MGL法やAMⅢ法などの沈殿法)で濃縮してから検鏡する.③鉤虫,糞線虫などの場合,誤認や見落とし