診療支援
検査

慢性閉塞性肺疾患(COPD)
野田 裕道
(NTT東日本伊豆病院・呼吸器科部長)

病態

 タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することなどにより生ずる.呼吸機能検査で気流閉塞を示す.臨床的には徐々に進行する労作時の呼吸困難や慢性の咳・痰を示すが,これらの症状に乏しいこともある


[参考]

 COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022 第6版


異常値

・スパイログラム 診断に必須の検査である.気管支拡張薬吸入後の1秒率(FEV1%=1秒量/努力肺活量)が70%未満のとき完全には正常化しない気流閉塞ありと判断する.病期分類には,対標準1秒量(%FEV1=1秒量/1秒量予測値)が用いられる.気管支拡張薬吸入前後の1秒量の改善量や改善率は,COPDの診断に際してその程度は問わない.

・胸部X線 他疾患の除外,気腫性病変,心不全合併の診断に有用であるが,早期診断には役立たない

・フローボリューム曲線 補助的診断検査に位置づけられる.スパイロメトリーとともに行う.最大呼気速度の減少,形状(下行脚が下に凸の曲線を描く),勾配の平低化を確認

・胸部CT 他疾患との鑑別に有効な検査.早期発見に有効.肺野の気腫性病変

・経皮酸素飽和度(SpO2) %FEV1が50未満の場合,呼吸不全の検出のために行う.室内気でSpO2<92%であれば,動脈血ガス分析を行う

・動脈血ガス %FEV1が50未満の場合,呼吸不全の検出のために行う.PaO2の低下,PaCO2の上昇


経過観察のための検査項目とその測定頻度

(表216)

●スパイロメトリー 年1回.気管支拡張薬吸入後が望ましい

●動脈血ガス %FEV1が50未満の場合,年1回.急性増悪が疑われるときには,随時

●胸部X線 年1回.肺癌など他疾患の発生検出に行う


診断・経過観察上のポイント

①胸部X線は,進行例では,肺野の透過性亢進,末梢血管影の狭小化,横隔膜の平低化,心胸郭比の狭小化などがみられるが,これらの所見がなくてもCOPDが進行

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