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検査

肺血栓塞栓症(PTE)
海老原 明典
(東海大学医学部付属東京病院教授・呼吸器内科)

病態

 肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism;PTE)は,肺動脈が血栓などの塞栓子により閉塞して生じる疾患で,肺循環動態の変化と換気血流比不均等($\rm{\dot{V}}$A/$\rm{\dot{Q}}$ミスマッチ)によるガス交換障害から呼吸不全を生じる.急性PTEから慢性PTEまで幅広い臨床像を呈する


[参考]

 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン2017年改訂版


異常値

・動脈血ガス分析 特徴的変化はPaO2PaCO2の低下.A-aDO2が開大するほど重症.酸素吸入でもPaO2改善が乏しい場合本症を強く疑う

・胸部X線 多くの症例では肺野に異常を認めない.肺動脈影の拡大,右心影の拡大など.異常陰影が認められることはむしろ少ない

・心電図 古典的にはSQTパターン,右軸偏位,右胸部誘導のT陰転,肺性Pなどの急性右心負荷.多くは非特異的ST-T変化,洞性頻脈などにとどまる

・心エコー 右心負荷所見,PA圧の測定も参考

・肺血流シンチグラム・胸部CT 胸部X線所見と一致しない区域性の血流欠損.換気スキャンの併用により$\rm{\dot{V}}$A/$\rm{\dot{Q}}$ミスマッチを認めれば診断は確定的.スキャンを有しない施設も多いため,現在は造影CTが確定診断の必須項目.同時に骨盤,下肢のCTまで行い血栓の有無を確認

・右心カテーテル検査 可能であれば,肺動脈圧,心拍出量の測定や混合静脈血ガス分析(S$\rm{\bar{v}}$O2など),肺血管抵抗の測定など

・血清生化学検査 血清LD値上昇,血清ビリルビン値の軽度上昇など.抗リン脂質抗体も重要

・凝固・線溶機能検査 Dダイマーは感度が優れており,0.5μg/mL以下であればPTEを否定できる.また,FDP上昇を認める場合が多い.PTEの背景にプロテインS,アンチトロン

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