病態
薬物に起因した肝障害.成立機序から,中毒性と特異体質性に分類され,後者は代謝性特異体質とアレルギー性特異体質に区分される.また,これら一般型以外に,特定の薬物で脂肪化,腫瘍形成,血管病変などが生じる特殊型があり,チェックポイント阻害薬による自己免疫機序を介する肝障害,抗癌薬,免疫抑制薬によるB型肝炎ウイルスの再活性化もDILIに含む
異常値
●トランスアミナーゼ 高値(肝細胞傷害型)
●γ-GT ときに高値(胆汁うっ滞型)
●ALP ときに高値(胆汁うっ滞型)
●末梢血白血球数 しばしば増多
●末梢血好酸球数 増多,血清IgE上昇(アレルギー性でしばしば)
●薬剤リンパ球刺激試験(DLST) 陽性(陰性でも否定できない)
●肝生検
・肝細胞傷害型:肝細胞変性・壊死が主体,炎症反応はないか軽度,小葉中心部が壊死
・薬物アレルギーによる肝障害:ウイルス性肝炎と区別しがたい
経過観察のための検査項目とその測定頻度
●血液検査 [急性期]週2~3回 [回復期]週1~2回
●腹部超音波 [急性期]入院時 [回復期]適宜
●腹部CT [急性期]入院時 [回復期]適宜
●肝生検 [急性期]いつでも1回
診断・経過観察上のポイント
①初発症状として,発熱,発疹,皮膚瘙痒,黄疸を認めることがある.②肝機能異常は薬物の摂取後通常90日以内に出現し,疑われる薬物の投与との時間的関連を認める.ときに2~6カ月後の発症もある.偶然の薬物再投与で肝機能異常が再発することもある.③診断は問診などから特定の薬物投与と肝障害発現との関連性を推察するが,チャレンジテストは原則禁忌である.④臨床所見上,肝細胞傷害型と胆汁うっ滞型に分けられるが,混合型が多い.⑤薬物中止後多くは肝機能改善を示す.重症例ではステロイドを投与.劇症化に注意が必要.まれに進行して肝不全に至るものもある.⑥次の文献を参照のこと.滝川 一ほか:DDW-J 20
関連リンク
- 臨床検査データブック 2023-2024/α1-アンチトリプシン〔α1-AT〕 [保] 80点
- 臨床検査データブック 2023-2024/α1-酸性糖蛋白〔AAG,AGP〕《α1-アシドグリコプロテイン〔α1-AG〕》《オロソムコイド〔ORM〕》
- 臨床検査データブック 2023-2024/アルコール性肝障害(ALD)
- 臨床検査データブック 2023-2024/溶血性尿毒症症候群(HUS)
- 新臨床内科学 第10版/3 慢性肝炎
- 新臨床内科学 第10版/8 薬物性肝障害
- 新臨床内科学 第10版/(2)栄養・代謝障害による認知症
- 新臨床内科学 第10版/4 高IgD症候群
- 今日の診断指針 第8版/急性間欠性ポルフィリン症
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