診療支援
検査

ヘモクロマトーシス
尹 聖哲
(兵庫県立加古川医療センター副院長)

病態

 過剰の鉄沈着による全身の臓器障害


異常値

・血清鉄 180μg/dL以上

・トランスフェリン(Tf)飽和度 60%以上

・血清フェリチン 1,000ng/mL以上

・肝CT所見 CT値90H.U.以上

・肝MRI所見 T1,T2強調像で低信号

・肝生検所見 プルシアン・ブルーによる鉄染色で肝実質細胞に鉄過剰沈着

・肝鉄含量 10,000μg/g乾燥肝重量以上


経過観察のための検査項目とその測定頻度

●ヘモグロビン(Hb),Tf飽和度,血清フェリチン‍ [急性期]瀉血療法中2~3年は治療効果判定と貧血合併症把握のため1~2週ごと [安定期]維持療法中または除鉄完了後は2~3カ月ごと

●肝機能検査‍ [急性期]瀉血療法中は病期判定,治療効果判定のため2~4週ごと [安定期]維持療法中または除鉄完了後は2~3カ月ごと

●肝CTまたは肝MRI 治療効果判定および肝癌合併のスクリーニングのため6カ月ごと.除鉄が完了してもスクリーニングを続ける

●上部消化管内視鏡‍ [定期的スクリーニング]肝硬変合併例で6カ月~1年ごと

●心電図・心エコー 不整脈,心機能把握のために6カ月~1年ごと


診断・経過観察上のポイント

①遺伝性ヘモクロマトーシスは鉄輸送関連蛋白の先天性機能異常により鉄吸収が亢進し,肝,膵,心,下垂体などの臓器に沈着して線維化と機能不全をきたす.②二次性ヘモクロマトーシスは無効造血を伴う貧血,大量飲酒,大量輸血や鉄剤投与などに起因する.日本では遺伝性はまれなので,鉄過剰性をみたらまず二次性を考える.③臨床所見として肝腫大(90%以上),皮膚の色素沈着(70%),糖尿病(50%),心症状,関節症状などが認められる.④経過観察では糖尿病,肝硬変,心不全,不整脈などの合併症に注意する.⑤肝細胞癌の合併率が30%と高率なので,6カ月に1回は肝癌のスクリーニングを行う.⑥瀉血療法はHb11g/dL以下,血清鉄,T

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