診療支援
検査

重症急性呼吸器症候群(SARS)
北村 義浩
(日本医科大学医学教育センター個別化教育推進部門・部門長(特任教授))

病態

 SARSコロナウイルスの感染に起因する急性呼吸促迫症候群(ARDS)


異常値

・ウイルス遺伝子検査 鼻腔咽頭ぬぐい液,喀痰,血清,便,尿からSARSコロナウイルスの核酸を検出する

・血算・生化学 しばしば,リンパ球減少,LD,ALT,AST,CK上昇,PaO2低下が認められる.重症例ほどその程度が著しい.重症例では,腎不全徴候(クレアチニン上昇,BUN上昇),出血傾向(血小板減少,APTT延長,Dダイマー上昇),白血球減少も認められる.病期によっては白血球上昇も認められることもある.まれに貧血.下痢に起因する電解質異常(低Na血症など)も認められる

・胸部X線 ARDS様のすりガラス陰影


経過観察のための検査項目とその測定頻度

●呼吸管理項目(PaO2,胸部X線,CT) 症状に応じて適宜(ARDSの項目を参照)

●血清LD,好中球数 著増は,予後不良を推測させるため,毎日測定

●腎機能,出血傾向のモニタリング 状態管理のために必要であるので毎日


診断・経過観察上のポイント

①SARS感染地域への2週間以内の旅行歴が診断上重要.潜伏期は通常2~10日(平均6日).38℃以上の突然の発熱(必発),咳・息切れ・呼吸困難などの呼吸器症状があり,胸部X線で肺炎またはARDSの所見(すりガラス様陰影)がみられる.下痢は頻繁に認められる.めまい,頭痛,悪寒戦慄,食思不振,全身倦怠感,意識混濁などの症状がみられることもある.鑑別としてCOVID-19とインフルエンザとマイコプラズマ肺炎とクラミジア肺炎が重要.中東への2週間以内の旅行歴がある場合,中東呼吸器症候群(MERS)も鑑別対象となる.改正感染症法で2類感染症とされているので,診断した場合は報告する義務がある.②約80%の症例は1週間ほどで回復する.しかし,約20%の症例では重篤な呼吸不全に陥る.特に高齢者ではほぼ全例で起きる.呼吸器機能をみなが

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