A.ER診療のポイント
●痙攣とは脳の異常な放電によって体の一部もしくは全身の筋肉の不随意な収縮を示す臨床症状である.いわゆるてんかんは痙攣の原因の一つであるが,必ずしも痙攣を伴わないこともある.ERでの診療に際して,最も注意を要するのは全身の痙攣が持続する痙攣重積である.
●以前は30分以上痙攣が持続するものを痙攣重積と定義していたが,最近では,5分以上痙攣が持続するものを痙攣重積と呼ぶ.これは多くの痙攣は数分で止まり,また数分以上持続する場合,神経損傷をきす可能性があることから変更された.痙攣重積では30日死亡率が19~27%と高率であるため,迅速に処置を要する1).
●多くの痙攣は発症後数分で自然に止まる.すなわちERを受診する時点において止まっていることもある.このような場合,患者の訴えが本当に痙攣であったのか否かの判断が重要である.
●痙攣と混同しがちな症状として失神が挙げられる.失神では一過性に意識が消失するがすぐに完全に回復し,痙攣では回復後にしばらく意識障害が残り(post-ictal confusion period),尿や便の失禁を伴うことが多い.また不整脈によって一過性に脳の低酸素状態が起こり,実は心室細動が痙攣と判断されることがあり注意が必要である.
●痙攣重積はてんかんの患者において治療薬剤の濃度が不十分である場合に起こりやすい.その他の原因として外傷や感染,電解質異常や外傷,薬物中毒などで発症する.
●てんかんの病歴を有する患者では痙攣開始前に知覚の変化や嗅覚,視覚の変化などの前兆を感じていることがある.
B.最初の処置
1バイタルサインと静脈路確保
痙攣重積状態で搬入された患者ではバイタルサインの測定が困難である.しかし,一般的に用手的に気道を確保し十分量の酸素(10Lをリザーバー付きマスクで)を投与し,すぐに静脈路確保を行う.また,すぐに心電図モニターとパル
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/ブドウ糖《ブドウ糖 ブドウ糖》
- 治療薬マニュアル2024/チアミン塩化物塩酸塩《メタボリン》
- 治療薬マニュアル2024/フェニトイン《アレビアチン ヒダントール》
- 治療薬マニュアル2024/ジアゼパム《セルシン ホリゾン》
- 治療薬マニュアル2024/フェノバルビタール《フェノバール》
- 治療薬マニュアル2024/フェノバルビタールナトリウム《ノーベルバール》
- 治療薬マニュアル2024/(合剤)イミペネム水和物・シラスタチンナトリウム《チエナム》
- 治療薬マニュアル2024/アンピシリン水和物《ビクシリン》
- 治療薬マニュアル2024/アミトリプチリン塩酸塩《トリプタノール》
- 治療薬マニュアル2024/ハロペリドール《セレネース》
- 治療薬マニュアル2024/テオフィリン《テオドール ユニフィル》
- 治療薬マニュアル2024/チオペンタールナトリウム《ラボナール》
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/13 痙攣
- 今日の治療指針2023年版/熱性けいれん(熱性発作)
- 今日の救急治療指針 第2版/意識障害
- 今日の救急治療指針 第2版/痙攣(重積症を含む)
- 内科診断学 第4版/血尿
- 今日の小児治療指針 第17版/けいれん
- 内科診断学 第3版/痙攣
- 今日の小児治療指針 第17版/熱性けいれん
- 新臨床内科学 第10版/【4】けいれん