診療支援
治療

不随意運動
involuntary movement
山下雅知
(帝京大学ちば総合医療センター・ER部長)

A.ER診療のポイント

●自分の意思とは関係なく現れる異常運動のことを不随意運動という.神経変性疾患や脳血管障害による錐体外路障害や,肝疾患・甲状腺疾患・代謝性疾患・薬物中毒など種々の病態により起こりうるが,原因がはっきりしないこともある.一般に,致死的な不随意運動は少ないが,激しい不随意運動では呼吸筋を障害することもあり,また軽症であっても患者や家族からみれば非常に気になる症状であると同時に,転倒や転落を引き起こすこともあるので,適切な処置や対応が必要となる.小児や高齢者では,特に服用薬物の影響を考慮しなければならない.

●薬物性の不随意運動は,ドーパミンの受容体や伝達をブロックする薬物が原因で発症することが多く,ほとんどが精神科で使用される薬物に起因するが,消化器領域で使用される薬物〔メトクロプラミド(プリンペラン®),プロクロルペラジン(ノバミン®)など〕のこともあるので,十分な注意が必要である.

●なお,救急外来を受診する不随意運動患者のピットフォールとして,心因性の不随意運動がある.この場合,身体表現性,ときには虚偽性の運動障害として,様々なタイプの不随意運動を呈する.発症は急性で女性に多くみられ,既知の運動障害とは一致しない異常な運動パターンを呈することが多いが,一般に呼吸は障害されない.


B.最初の処置

①まず,バイタルサインをチェックし,特に酸素飽和度に注意して呼吸障害がないことを確認する.

②万一,呼吸障害があれば,気道確保・酸素投与・呼吸補助を行う.

③バイタルサインが安定している症例では,神経所見を丁寧に取り,必要に応じて血液検査(血算,生化学),CT検査,MRI検査,脳波検査などを施行する.

④後述のように不随意運動には様々なものが含まれるので,それぞれの病態や処置は個別に述べる.


C.病態の把握・診断の進め方

1鑑別診断

‍ 図1に異常運動解釈のためのアルゴリズム

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