A.ER診療のポイント
●喀血とは,下気道からの出血を喀出したものである.痰に血液がからむ程度の軽度のものを血痰と呼んで区別する場合もあるが,本質的な差はない.鼻腔・口腔・咽頭からの出血(いわゆるpseudohemoptysis),吐血,吐血の誤嚥との鑑別が必要である.
●救急外来で遭遇する症候としての頻度はそれほど高くないが,大量喀血は緊急性,死亡率ともに高い.また,肺塞栓症,肺結核,肺癌,うっ血性心不全などの緊急性または重症度の高い原因疾患もある.
●原因では,各種の肺感染症,気管支拡張症,肺腫瘍を始めとする呼吸器疾患が主であり,うっ血性心不全,僧帽弁狭窄症などの心疾患,出血性素因などもある.大量喀血の原因としては,気管支拡張症と空洞を形成した肺結核が多い.
●大量喀血では検査の前に気道確保と輸液を行い,呼吸・循環の安定化を図る.
●診断には胸部X線撮影が基本となる.精査にはCTを第1選択とし,