診療支援
治療

喀血
hemoptysis
瀧野昌也
(長野救命医療専門学校・救急救命士学科長)

A.ER診療のポイント

●喀血とは,下気道からの出血を喀出したものである.痰に血液がからむ程度の軽度のものを血痰と呼んで区別する場合もあるが,本質的な差はない.鼻腔・口腔・咽頭からの出血(いわゆるpseudohemoptysis),吐血,吐血の誤嚥との鑑別が必要である.

●救急外来で遭遇する症候としての頻度はそれほど高くないが,大量喀血は緊急性,死亡率ともに高い.また,肺塞栓症,肺結核,肺癌,うっ血性心不全などの緊急性または重症度の高い原因疾患もある.

●原因では,各種の肺感染症,気管支拡張症,肺腫瘍を始めとする呼吸器疾患が主であり,うっ血性心不全,僧帽弁狭窄症などの心疾患,出血性素因などもある.大量喀血の原因としては,気管支拡張症と空洞を形成した肺結核が多い.

●大量喀血では検査の前に気道確保と輸液を行い,呼吸・循環の安定化を図る.

●診断には胸部X線撮影が基本となる.精査にはCTを第1選択とし,気管支鏡,種々の検体検査を適宜追加する.

●積極的な止血処置としては,経カテーテル動脈塞栓術,気管支鏡を利用した止血処置,開胸手術が行われるが,いずれも外来診療の範囲を超える.


B.最初の処置

1喀血であることの確認

 「血を吐いた」という訴えには,喀血以外に吐血,吐血の誤嚥,鼻腔・口腔・咽頭からの出血が含まれる.気管以下の気道からの出血を咳とともに口から出したものが喀血であり,その性状は鮮紅色,泡沫状でpHは中性ないしアルカリ性である.吐血は暗赤色で酸性のpHを示す.口腔内,鼻腔内の出血源の有無を確認する.

2大量喀血の処置

①気道確保と酸素化の維持を優先する.まず心電図モニターとパルスオキシメータを装着し,高流量酸素を投与する.太めのカテーテルで末梢静脈路を確保し,循環動態に応じた速度で乳酸リンゲルの投与を開始する.出血側がわかればそれを下にした側臥位にして,健側への血液の流れ込みを防止する.

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