診療支援
治療

発熱
fever
伊良部徳次
(総合病院 国保旭中央病院・救命救急センター長)

A.ER診療のポイント

●問診:発熱を訴えて救急外来を受診する患者はきわめて多いが,発熱のみのことはまれであるので詳細な問診が重要である.いつ頃からの発症か,発熱の程度,悪寒戦慄の有無,随伴症状(頭痛,呼吸器症状,腹部症状,尿路症状,関節痛など),家族歴,渡航歴などを聴取する.特に以下の問診は重要である.

①呼吸器症状や下痢・腹痛を伴う場合は,家族あるいは会社・学校など生活を共有する者で同様症状を呈する者がいるか否か

②下痢,腹痛などを伴う場合は最近の海外渡航歴(特に途上国)の有無

③皮疹を伴う場合は,最近の薬剤服用歴

④単に熱っぽいとの訴えでは体温の日内変動(朝と夕方の体温)

●理学所見:皮疹の有無,表在リンパ節,咽頭視診,呼吸音聴診,腹部触診などをおろそかにしてはならない.

●麻疹,風疹,水痘など伝染力の高い疾患が疑われた場合は,他の患者への感染予防に配慮した診察を行う.


B.最初の処置

1伝染性疾患

 伝染力の高い疾患が疑われた場合,救急診察室の状況に応じて時間的あるいは空間的な隔離を考慮する.

2バイタルサインのチェック

①発熱患者に限らないが救急患者では血圧,脈拍などのバイタルサインは必ずチェックして記録する.

②入院後あるいは後日の一般外来受診時のバイタルサインとER受診時の状況との比較で,病態変化が把握しやすくなる.

3問診と理学所見

 詳細な問診と理学所見の評価の後に,治療計画,入院計画に反映させる必要があると判断した場合は,白血球,CRP,画像検査などが行われる.

4ERでの血液培養について

 感染巣によって起因菌を予測して抗菌薬を投与することがあるが,抗菌薬を投与する前には必ず血液培養を行う.起因菌の検出と感受性検査は治療方針の決定と今後の予後を大きく左右するので抗菌薬を投与する必要性がある場合は血液培養が必須である.重症感が強い場合は異なる2か所から採取して菌の検出率を高める.


C.病態

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