診療支援
治療

薬物中毒(自殺企図を含む)
drng intoxication
有吉孝一
(神戸市立医療センター中央市民病院・救急部長)

A.小児ならではのポイント

●小児の中毒は予防が最重要課題である.日本中毒情報センターにかかる電話の77%が5歳以下の小児についての問い合わせで,家庭用品によるものが多い.頻度は①化粧品,②タバコ関連,③洗剤の順である1).ほとんどが誤飲により毒薬物に曝露している.

●事故は家族がそばで注意していても発生してしまうことがある.家庭では,小児の手の届く範囲には,口に入るサイズのものは置かないように心がけたい.過去に誤飲事故が起きた場所に,もう一度同じように置いているケースもみられる.保護者による一層の配慮を求めたい.歩き始めた小児は行動範囲が広がることから特に注意を要する.

●また,成人では無症状でも,小児にとっては少量または1錠の内服でも致死的となる中毒があることに留意すべきである(表1).


B.最初の処置

1二次災害に留意

 中毒診療で特記すべき留意点は,二次災害を防ぐことである.ほとんどが家庭用品の誤飲誤食である小児ではその危険性は低いが,病院前救護の段階で,腐敗臭(硫化水素),刺激臭(有機リン系)などの情報があれば,病院到着後,患者をそのまま救急室に入れずに,院外で脱衣させ密閉した袋に着衣を入れておく.病院前除染や二次災害防御の体制を取らねばならない.

2バイタルサインの評価とその安定化

 まずはバイタルサインを評価する.PAT,ABCDE(図1)に異常を認めた場合は,鑑別診断よりもその安定化を優先させる.安定化していれば中毒物質の特定および病歴聴取を行うが,人数に余裕があればもちろん同時に行ってよい.


C.病歴の把握・診断の進め方

1原因物質の特定・推測

①発見状況(事故の可能性,学校・家庭での薬剤の取り扱いの有無,遺書の有無,薬や薬包の散在,通院歴など)や希死念慮に関して聞き出す.これらの状況から,薬物の同定と曝露からの経過時間を推定する.

②一方で乳幼児では誤飲した量が正確に把握で

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?