A.病態
●昆虫や動物の鋭く尖った口器による刺し傷,あるいは顎による咬み傷を指す.皮膚全層を貫き,皮下組織に達した傷は当然,刺創あるいは咬創と表記するが,前項に述べられている,鋭利な器具による傷害である「刺創」(→)とは区別するため,「刺咬傷」とする.植物の棘による損傷は本項では含めない.損傷の程度は,鋭利な突起物や顎の大きさや威力により左右され,また,有毒な物質を注入する機能があるか否かで注意点が異なる.
●人体に刺咬傷を加える危険のある生物としては,節足動物(アリ,ハチ,アブ,ブユ,ムカデ,クモ,サソリ,ダニ),爬虫類(ヘビ),海洋生物(ヒトデ,クラゲ,ウニ,ミノカサゴ,ゴンズイ,エイ,ウミヘビ,オキザヨリ,テンジクダツ),哺乳類(ネズミ,ハムスター,ネコ,イヌ,クマ)などが挙げられる.
B.初期診療
1刺咬傷のタイプ
1高エネルギー損傷タイプ 強力な顎で咬まれる,あるいは鋭利な歯や角で切り裂かれるなどした場合,皮膚の損傷がひどく,深部組織および臓器損傷の危険があり,出血・感染などの合併症が生じやすい.例えば,クマやイノシシ,イヌ(大型犬)による咬傷,ウシやシカ,鋭利な顎を持つ魚ダツやオキザヨリによる刺傷がそれで,場合によっては出血死する危険がある.組織挫滅や深達度が大ならば,ブドウ球菌や嫌気性菌による感染合併および破傷風合併の危険性が高い.
2毒素注入タイプ
①刺咬した際に毒物を体内に注入する生物がいる.例えば,マムシ,ハブなどの爬虫類,アカエイ,ゴンズイ,ハオコゼ,ミノカサゴ,アイゴ,ガンガゼ・ラッパウニ,オニヒトデ,カツオノエボシ,アンドンクラゲ,シロガヤ,ヒョウモンダコ,エラブウミヘビなどの海洋生物,ミツバチ,スズメバチ,キアシナガバチ,オオハリアリ,ムカデ,クモなどの節足動物が挙げられる.毒は,局所および全身の炎症,組織壊死,溶血,神経麻痺,激痛誘発など種類によって様々であ
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