A.病態
肘関節は前腕近位端(尺骨近位端と橈骨近位端)と,その2つの関節面が適合する上腕骨遠位端で構成され,それぞれ近位橈尺関節および腕橈関節,腕尺関節を形成している.このため,肘の外傷は尺骨近位端の骨折(肘頭骨折),橈骨近位端の骨折(橈骨頭・頸部骨折)および上腕骨遠位端骨折,そして肘関節脱臼を含む靱帯損傷に大きく分けることができる.もちろん,これらの損傷が合併することもまれではない.
B.初療と重症度判定
肘関節周囲の骨折は小児に特有な骨折がいくつかあるため,小児と成人で分けたほうが理解しやすい.
1小児の肘関節周囲骨折・脱臼
小児の肘周辺骨端核の出現時期は,各年齢で異なる(図1図).このため,年齢によるX線像を理解していないと誤診しやすい.見逃されると,成長につれて外反肘・内反肘などの変形や,それに伴う遅発性の神経障害を起こす.また,神経損傷を伴うこともまれではなく,虚血によるコンパートメント症候群を起こすこともある.
1上腕骨顆上骨折(図2図)
①最も頻度の高い小児骨折である.小児が転倒して手をついた後,肘関節の強い疼痛や変形を訴える時には,まず本骨折を疑う.転位が大きいほど神経・血管損傷を起こしやすく,正中神経,橈骨神経が損傷されることが多い.頻度は低いが重篤な合併症として,骨片による上腕動脈の圧迫と虚血に起因するコンパートメント症候群がある.また,骨折部の不十分な整復による固定は,将来的に内反肘変形を生じる可能性がある.
②転位の大きい骨折に対しては,早期の整復と固定が治療の原則である.早期に全身麻酔下に徒手整復後,鋼線を用いた経皮的ピンニングを行う方法が主流となっている.
2上腕骨外顆骨折(図3図) 関節内骨折である.小児の肘関節周囲の骨折では,上腕骨顆上骨折に次いで頻度が高い.整復が不十分な場合,後に成長障害に伴う外反肘,遅発性尺骨神経麻痺を呈するため,手術的治療を原則と
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