A.病態
肘関節は前腕近位端(尺骨近位端と橈骨近位端)と,その2つの関節面が適合する上腕骨遠位端で構成され,それぞれ近位橈尺関節および腕橈関節,腕尺関節を形成している.このため,肘の外傷は尺骨近位端の骨折(肘頭骨折),橈骨近位端の骨折(橈骨頭・頸部骨折)および上腕骨遠位端骨折,そして肘関節脱臼を含む靱帯損傷に大きく分けることができる.もちろん,これらの損傷が合併することもまれではない.
B.初療と重症度判定
肘関節周囲の骨折は小児に特有な骨折がいくつかあるため,小児と成人で分けたほうが理解しやすい.
1小児の肘関節周囲骨折・脱臼
小児の肘周辺骨端核の出現時期は,各年齢で異なる(図1図).このため,年齢によるX線像を理解していないと誤診しやすい.見逃されると,成長につれて外反肘・内反肘などの変形や,それに伴う遅発性の神経障害を起こす.また,神経損傷を伴うこともまれではなく,虚血によるコンパートメ