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治療

家庭用品による中毒(化粧品,石鹸,洗浄剤,義歯洗浄剤,文具品,保冷剤,他)
household manufacture poisoning
宮加谷靖介
(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・救命救急センター部長)

 日本中毒情報センターの資料によると2010年の中毒相談件数36,044件における「家庭用品」の割合は,23,309件と64.7%を占めている(表1).家庭用品中毒相談件数の中で,誤飲・誤食による家庭用品別相談件数を表2に示す.本項では,件数の多い家庭用品と注意を要する家庭用品について述べる.


A.化粧品

 化粧品中毒の中で注意しなくてはならない物質としてエタノールがあげられる.表3に示すように多くの化粧品にエタノールが含有されている.その他,パーマ液・染色剤および除光液などに含まれるチオグリコール酸・染料・アルカリ溶液が問題となる.

1エタノール

 化粧水・香水・ヘアリキッド・ヘアトニック・ドライシャンプーや,二重まぶた形成剤・除去剤などに含まれる.小児の誤飲では重篤な中毒症状は生じないことが多いが,100%エタノール換算で6mL程度を短時間で服用した場合,危険である.「急性アルコール中毒」の項()を参照.

1症状 弱い酩酊状態では,顔面の紅潮,注意力の低下を生じ,軽度酩酊状態では,抑制がとれて多弁,陽気になる.中等度酩酊状態では,運動失調,知覚鈍麻,言語不明瞭となり,強度酩酊状態では,意識不明瞭,瞳孔散大,泥酔状態では,昏睡,重篤な低血糖,低体温状態となり,死の危険性が大きくなる.小児では,低血糖性痙攣に注意する.

2重症度判断 経口致死量は,成人で6.3~7.6mL/kg,幼少児で3.8mL/kg程度である.

3標準的治療

①胃洗浄:服用後1~2時間以内に行う.

②輸液療法:乳酸リンゲル液に50%グルコース液を20~40mL入れて投与する.

③ビタミンB群の投与:エタノール分解酵素の補酵素である.

④呼吸循環管理:気管挿管・人工呼吸器管理,昇圧薬の投与

⑤血糖管理:小児では頻回に行う.

4特殊治療 血液浄化法:血液透析にてエタノールの除去が可能である.

2チオグリコール酸

 チオグリコー

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