向精神薬とは主要な作用として,精神機能,行動あるいは経験に影響を与える薬物の総称である.精神症状の治療に用いる向精神薬を表1図に示す.
A.抗精神病薬
抗精神病薬は幻覚,妄想,興奮などの精神病の症状に対して使用する.統合失調症以外に,躁病やアルコール離脱,脳器質性精神病,症状精神病,身体疾患によるせん妄に処方される.
抗精神病薬は開発時期により2世代に分かれる.第1世代は定型抗精神病薬と呼ばれている.第2世代は非定型抗精神病薬と呼ばれ,副作用を少なくし,陰性症状の改善にも役立つ.作用する受容体に特徴があり,SDA(セロトニン-ドパミン拮抗薬),MARTA(多元受容体標的化抗精神病薬)などと呼ばれている.
近年,抗精神病薬は肺動脈塞栓症の危険因子の一つと報告されている.抗精神病薬服用中の患者に突然の血圧低下や呼吸悪化がみられた場合は,血栓塞栓の確認,鑑別を必要とする.
1フェノチアジン系
薬理作用は,ドパミン受容体,アドレナリン受容体,ムスカリン受容体を遮断する他,多彩に作用する.
1重症度判断 呼吸停止,心室性不整脈,血圧低下,昏睡,痙攣,体温異常を生じた場合は重症である.注意すべきは心電図で,QRS幅が0.12秒以上に延長した際は心室性不整脈が生じる可能性があり,モニター監視は必須とする.QT間隔の延長がある場合は低カリウム血症,低マグネシウム血症に気をつける.心室性不整脈の出現にはQRS幅のチェックが,より大切である.
2治療 ほとんどが対症療法で対応可能である.服用後,1時間以内であれば胃洗浄を行う.活性炭を投与する(1g/kg).QRS幅の延長には炭酸水素ナトリウム薬の投与を行い(1~2mEq/kg),pH7.44~7.55に保つ.
3特殊治療 血液浄化療法の効果はない.解毒・拮抗薬もない.
2ブチロフェノン系
薬理作用は,フェノチアジン系と比べてドパミン受容体遮断作用が強い
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