A.代表的な物質と病態
ガス中毒の原因物質には,一酸化炭素,塩素,硫化水素,二酸化硫黄(亜硫酸ガス),天然ガスなどが挙げられるが,様々なガスが中毒を起こす.これらのガス中毒の病態を網羅して考えることができるのが,トキシドロームの考え方である.トキシドロームとは,中毒物質を症状や徴候,病態生理からおおまかにグループ分けする考え方である.トキシドロームに関しては様々なものが知られているが,表1図に,ガス中毒に関係するトキシドロームを示す.
1刺激性ガストキシドローム
①刺激性ガストキシドロームは,水溶性の程度により3種類に分類される.
②主な標的器官・臓器は気道,呼吸である.水溶性が高いものほどより上気道に,水溶性が低いものほど,より下気道に病変の主体がある.呼吸器系の初期症状は,灼熱感,鼻汁過多,上気道浮腫,咳,発声障害,吸気性喘鳴,喉頭痙攣であるが,これが進むと肺水腫,低酸素血症,頻呼吸に進む.