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治療

ガス中毒(一酸化炭素,塩素,硫化水素,亜硫酸ガス,天然ガスなど)
poisonous gas poisonings(carbon monxide,chlorine,hydrogen sulfide,sulfur dioxide,and natural gases)
奥村 徹
(川崎医科大学客員研究教授・救急医学)

A.代表的な物質と病態

 ガス中毒の原因物質には,一酸化炭素,塩素,硫化水素,二酸化硫黄(亜硫酸ガス),天然ガスなどが挙げられるが,様々なガスが中毒を起こす.これらのガス中毒の病態を網羅して考えることができるのが,トキシドロームの考え方である.トキシドロームとは,中毒物質を症状や徴候,病態生理からおおまかにグループ分けする考え方である.トキシドロームに関しては様々なものが知られているが,表1に,ガス中毒に関係するトキシドロームを示す.

1刺激性ガストキシドローム

①刺激性ガストキシドロームは,水溶性の程度により3種類に分類される.

②主な標的器官・臓器は気道,呼吸である.水溶性が高いものほどより上気道に,水溶性が低いものほど,より下気道に病変の主体がある.呼吸器系の初期症状は,灼熱感,鼻汁過多,上気道浮腫,咳,発声障害,吸気性喘鳴,喉頭痙攣であるが,これが進むと肺水腫,低酸素血症,頻呼吸に進む.心循環器系では,低酸素血症による.頻脈・頻拍性不整脈,虚血性変化・心筋梗塞を起こし,最悪の場合,心停止となる.中枢神経系は,低酸素血症による不安,不穏,錯乱,痙攣,意識レべル低下,昏睡,死亡に至る.皮膚は冷たく,蒼白,多汗となる.水溶性のあるガスの場合は目や鼻などの粘膜を刺激し,鼻水,流涙,結膜の炎症による眼痛が出る.消化管系は水溶性があれば,咽頭粘膜の障害による疼痛,悪心・嘔吐がみられる.肝臓に対しては,直接障害はないが,低酸素血症の結果肝細胞壊死,凝固障害が起こる.腎尿路生殖系には直接障害はないが,低酸素血症の結果,急性尿細管壊死,急性腎不全も起こりうる.

2窒息性トキシドローム

①窒息性トキシドロームは,作用形式から次の2つに分けられる.ひとつは,単純性窒息をきたすもので,二酸化炭素,メタン,プロパンが代表的な物質で,単に,これらの気体で空気中の酸素が置換されて酸素濃度が下がることによる

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