A.疾患・病態の概要
●酸素欠乏症等防止規則によれば,酸素欠乏とは「空気中の酸素の濃度が18%未満である状態」であり,酸素欠乏症とは「酸素欠乏の空気を吸入することにより生ずる症状が認められる状態」と定義される.酸素欠乏により低酸素症が引き起こされるが,日本救急医学会・医学用語解説によると低酸素症とは,組織が低酸素状態におかれていることをいう.低酸素症の原因としては,酸素欠乏以外にも,①窒息による酸素供給停止,②意識障害に伴う低換気,③呼吸器疾患による酸素化能の低下,④貧血やCO中毒などにみられる酸化ヘモグロビンの減少,⑤血圧低下による循環障害,および,⑥シアン中毒などによる組織での酸素利用障害がある.
●吸気中の酸素分圧の低下は,高山への登山や,密閉空間での酸素消費,あるいは医原的に低酸素分圧となった混合ガスによる麻酔や人工呼吸管理などで起こるが,高山病に関しては他項が設けられているので割愛する(→).密閉空間での酸素濃度の低下は,それ自体で酸欠症を引き起こすとともに,混在するガスによる中毒を伴うことがあり,その影響を大きく受けることを念頭におくべきである.
B.最初の処置
①重症になれば昏睡や心呼吸停止が起こるので,まず診察時のバイタルサインを速やかにチェックし,異常があれば直ちに輸液ルート確保や気管挿管を含めた蘇生処置を開始する.
②バイタルサインが安定していれば,心電図や酸素飽和度モニターを装着しながら診察を進める.外傷の可能性もあるので,超音波検査を行うなどJATECに準じた初期診療を開始するとよい.
C.病態の把握・診断の進め方
1病歴聴取
診断のために最も重要である.どういう場所で事故が起こったか(冷蔵庫,マンホール,炭抗,船倉など),発生すると考えられるガスは何か(一酸化炭素,二酸化炭素,窒素,メタンガスなど),患者はどのような外力を受け,どのような状況で救出されたのか(自