神経所見のとり方
■医療面接のポイント
医療面接についてはすでに述べられているとおりであるが,神経疾患は医療面接による病歴情報の聴取のみで70〜80%は診断の目安がつくといわれ,特に重要である.医療面接の最も重要なポイントは,変性,脱髄性,発作性あるいは機能性,血管障害,感染,炎症(非特異的),代謝性,中毒,奇形,腫瘍,外傷,脊椎疾患,内科疾患,特に膠原病,自己免疫疾患などの病変の性質(疾患のカテゴリー)を診断することである〔下線は神経疾患に比較的特徴的なもの〕.代表的な発症と経過パターンを図2-111図に示す.
現病歴以外の聴取における注意点としては,以下のとおりである.
①年齢,性:変性疾患や脳血管障害は加齢がリスクファクター,女性では自己免疫疾患が多い.
②既往歴,妊娠・出産状況:先天性心疾患は脳血管障害のリスクファクターとなりうるし,Down(ダウン)症候群ではAlzheimer(アルツハイマー)病様の認知症症状を呈しうる.内科疾患に伴う病態としては高血圧症,糖尿病などの多くの内科疾患においていろいろな神経症状が伴う.発作性・機能性疾患や脱髄疾患は過去に同様の症状を経験していることがある.脱髄疾患は感冒様(感染)症状に引き続き発症することがある.交通事故を含めた外傷,手術歴も重要である.
③服薬・治療歴:薬物中毒として,特に高齢者では,少量でも意識障害などの顕著な障害をきたすことがある.
④生活歴:アルコール中毒,ビタミン欠乏症などでは栄養障害性神経障害が知られ,血管障害には喫煙がリスクファクターであり,心因反応は家族関係が原因のことがある.
⑤職業歴:中毒性疾患では有害物質への曝露の有無が重要で,心因反応は職場の人間関係が原因のことがあり,機能性疾患である肩こりや緊張型頭痛を起こすことがある.
⑥家族歴:変性疾患には遺伝性疾患も多い.家系図を書きながら具体的に尋ねるのがコツであ
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