今日の診療
内科診断学

低血圧
山沖 和秀


低血圧とは

■定義

 低血圧(hypotension)は表3-203のように分類される.低血圧では,血圧値が単に低いかどうかではなく,症状や全身反応の所見が重要である.たとえば同じ80mmHgでも,症状がなく元気ならば“体質性低血圧”で心配ないが,末梢のチアノーゼや精神神経症状,尿量減少をきたすようであれば,治療が必要な病態と判断する.

 なお,ショックについては,別項にも記載があるので参照されたい.

■患者の訴え方

 慢性に持続する低血圧では,症状がない場合も多いが,立ちくらみ,めまい,ふらつき感,易疲労感,倦怠感,なんとなく元気が出ない,頭が“ぼーっ”とする,集中力がない,眠気がある,頭重感,手足の冷感などを訴えることがある.しばしば,患者は「貧血がある」と訴える(実際は低血圧による脳貧血).

 血圧低下が急激に起こると,交感神経反射により,頻脈による動悸や,冷汗などを訴えることもある.

 血圧低下が高度となれば,失神発作,(特に高齢者で)脳循環障害による一過性脳虚血発作(四肢のしびれ,力が入らない,ろれつが回らない,視力障害)や,心筋虚血による狭心症発作,心筋梗塞(特に心内膜下梗塞)による胸痛をきたすこともある.

■患者が低血圧を訴える頻度

 持続性の低血圧は,人口の約0.1%とされるが,若年女性では1%程度とされ,内科初診患者の約1〜3%を占める.

 ただし,救急外来などでは,大出血,心筋梗塞など,他の重篤な疾患に伴って血圧低下をきたしている患者が多い.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-197)

 低血圧は,心拍出量の減少(出血,脱水,不整脈,内分泌疾患など),末梢血管抵抗の低下(自律神経異常や薬物など)などが原因となる.本態性低血圧では,心臓,末梢血管などを支配する自律神経系反射の減弱が原因となる.

 表3-204に低血圧をきたす主な疾患を示す.症候性低血圧をきたす疾患のな

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