今日の診療
内科診断学

チアノーゼ
奈良 信雄


チアノーゼとは

■定義

 血中の還元ヘモグロビン(Hb)もしくは異常Hbの増加によって,皮膚や粘膜が暗紫色になる状態をチアノーゼ(cyanosis)という.口唇粘膜,爪床,外耳,頰部などで目立ちやすい〔診察の進め方「部位別の身体診察 全身状態」図2-26参照〕.

■患者の訴え方

 皮膚や粘膜の色調が不良であることを訴えるが,それよりもチアノーゼを生じる原因となった呼吸器疾患や心疾患による呼吸困難,四肢冷感などの自覚症状のほうを強く訴える.

■患者がチアノーゼを訴える頻度

 チアノーゼを主訴として来院してくる患者の頻度は低いが,緊急処置を要する疾患のこともあり,ただちに原因疾患を診断しなければならない.心不全,ショック,呼吸不全などのときには,ただちに気道確保,人工呼吸,心臓マッサージなどの蘇生術を必要とすることがある.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-203)

 チアノーゼは,還元Hbが毛細血管レベルで5g/dL以上(Hbが15g/dLでは酸素飽和度が66%以下になると還元Hbが5g/dL以上になる),もしくは異常Hb (methemoglobin,sulfhemoglobinなど)が0.5g/dL以上になると生じる.ただし,皮膚の色や厚さ,毛細血管の状態などの影響を受ける.

 還元Hbの絶対濃度に依存するので,Hb濃度が増加している多血症では,わずかに酸素飽和度が低下しても還元Hbが増加してチアノーゼとなる.逆にHb濃度の低い貧血ではチアノーゼが発生しにくい.

 チアノーゼには,全身の皮膚と粘膜にみられる中枢性チアノーゼ,末梢性にみられる末梢性チアノーゼ,上肢と下肢,あるいは同じ上肢でも左右でチアノーゼの出現に差がある乖離性チアノーゼがある.

 中枢性チアノーゼは,心肺疾患などで動脈血酸素飽和度が低下した場合や,異常ヘモグロビン血症などで発生する.

 末梢性チアノーゼは,心不全や動

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