今日の診療
内科診断学

急性心不全
新沼 廣幸


急性心不全とは

■定義

 急性心不全(acute heart failure)は,日本循環器学会急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)によれば,「心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて急速に心ポンプ機能の代償機転が破綻し,心室拡張末期圧の上昇や主要臓器の灌流不全をきたし,それに基づく症状や徴候が急性に出現,あるいは悪化した病態」をいう.

■患者の訴え方

 急性心不全では,左室拡張末期圧や左房圧の上昇に伴う肺静脈うっ血と,右房圧の上昇に伴う体静脈のうっ血と低心拍出量による症状が現れる.

 このため,「数日前から静かにしていても息が切れ,動悸がする.夜間就寝後に息が苦しくて目覚める.横になって眠れない」「便秘.吐き気がする.食事がとれない.右脇腹が張る.心窩部が張る.下肢がむくむ.疲れやすい」「冷汗.尿量が少なくなった.ぼーっとする」といった訴えが多い.

 しかし,必ずしも典型的な症状を呈するわけではなく,咳嗽,息切れ,下腿浮腫,易疲労感を訴えた場合でも,急性心不全の可能性が高い.

■患者が起座呼吸や末梢浮腫を訴える頻度

 わが国の急性心不全registryであるATTEND研究によれば,起座呼吸の訴えは約69%で欧米疫学研究であるADHERE(Acute Decompensated Heart Failure National Registry)やOPTIMIZE-HF(Organized Program to Initiate Lifesaving Treatment in Hospitalized Patients with Heart Failure)の27〜34%に比較して高い比率であった.一方,末梢浮腫はわが国で68%,欧米で65%とほぼ同等であった.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

 図3-351に急性心不全の原因,表3-390に急性心不全をきたす疾患を示す.

 

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