現病歴:大学生.10日前から37.5℃の微熱と,軽く頭全体が痛む頭痛,肩こりがあった.普段と様子が違うので不思議に思ったが,定期試験前だったので病院は受診せず,特に薬を内服することもなかった.3日前から頭痛が強くなり,発熱も38℃に上昇していることに気づいたので,内科外来を受診した.今まで頭痛は時々あったが,肩こりのせいだと思っていた.
既往歴:生来健康.
身体所見:意識は清明.身長158cm,体重52kg,体温38.4℃,脈拍88回/分(整),血圧140/85mmHg,呼吸数14回/分.呼吸音清明,心音も正常.頭が痛くて目をつぶっていることが多い.
神経学的所見:項部硬直があり,Kernig徴候も陽性で,羞明感を訴えた.運動や感覚の麻痺もない.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・くも膜下出血
・脳梗塞
・脳出血
・髄膜炎,脳炎
頻度の高い疾患
・発熱を伴う頭痛では,感染症,内科的疾患による頭痛などが真っ先に挙がる.くも膜下出血でも微熱が出ることがある.また,癌性髄膜炎など非感染性の疾患も挙げられる.
■この時点で何を考えるか
医療面接と身体診察を総合して考える点
この患者では,〈p〉発熱があることが大きなヒントになる〔症候・病態編「頭痛」参照→〕.また,〈p〉10日前から持続性で悪化の経過をたどっている.
日本頭痛学会が提唱している「慢性頭痛ガイドライン2013」から,頭痛の分類を挙げる〔表4-2図→〕.
この患者の頭痛は,10日前から持続しており,急性〜亜急性の経過といえる.〈p〉発熱,項部硬直などの髄膜刺激徴候がみられるが,神経学的な異常所見に乏しい.
以上の病歴情報と身体所見からは,髄膜炎,なかでも感染性の髄膜炎の可能性を第一に疑うべきである.最も重篤で見逃すべきでない疾患から優先的に検索を行うのが妥当である.
診断仮説(仮の診断)
・髄膜炎,脳炎
・くも膜下出血
・脳梗塞
・脳出血
(以上