今日の診療
内科診断学

急激に増悪した胸痛
59歳 男性
水野 篤


現病歴:1週前から安静時に胸痛を自覚していた.本日,運動中に急激に胸痛が増悪し,医務室で休んでいたが軽快しなかったために救急車を要請して当院に来院した.

身体所見:意識は清明.身長173cm,体重71.3kg,BMI 23.8,体温36.5℃,脈拍81回/分,血圧138/93mmHg,呼吸数20回/分,SpO2 100%(リザーバーマスク 6L).呼吸音清明・副雑音なし.心音S1→S2→S3(−)S4(+),明らかな心雑音なし.背部痛なし.

既往歴:検診で脂質異常症を指摘されていたが特に内服歴なし.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

急性冠症候群(不安定狭心症,心筋梗塞)

肺血栓塞栓症

緊張性気胸

解離性大動脈瘤

Boerhaave症候群

頻度の高い疾患

食道炎

肺炎

胸膜炎

急性冠症候群(不安定狭心症,心筋梗塞)

肺塞栓

気胸

貧血

心因性呼吸困難・胸痛

■この時点で何を考えるか?

 医療面接と身体診察を総合して考える点

 この患者においては,安静時胸痛および当日の増強した胸痛から鑑別していく.比較的急性に発症した胸痛であり,ある程度,緊急の処置を要する疾患を鑑別に挙げる必要がある〔症候・病態編「胸痛および胸部圧迫感」参照〕.〈p〉虚血性心疾患と,肺塞栓症気胸の頻度が高く,緊急の処置を要する可能性も高い

 しかし,〈除〉バイタルサインでは呼吸数がやや増加している以外に大きな異常を認めず,呼吸音が清明であるということからは緊張性気胸気胸は考えにくい.肺塞栓についても,〈p〉心音でのⅡ音分裂や深部静脈血栓症の徴候がないこと,意識のはっきりしている患者において呼吸困難がないことから肺塞栓とは考えにくいが,完全には否定できない〈p〉やはり脂質異常症があり,かつBMI 23と軽度の肥満があり,急性に発症し,かつ安静時の胸痛が増強したことからは急性冠症候群が最も考えやすいだろう.ただ

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