今日の診療
内科診断学

進行する動作緩慢と歩行障害
68歳 女性
木村 哲也


現病歴:4年前から動きの鈍さが出現した.ふるえはないがシャツのボタンがかけにくくなり,得意であった習字が下手になった.歩行開始時に最初の1歩が出にくく,猫背で,ちょこちょことした歩き方で転びやすくなった.便秘や頻尿,立ちくらみはなく,物忘れや幻視はない.

既往歴:特記すべきことなし.

生活歴:喫煙歴なし,飲酒歴は機会飲酒.

家族歴:特記すべきことなし.

身体所見:身長160cm,体重57kg,体温36.2℃,脈拍80回/分,血圧98/66mmHg,呼吸数18回/分.意識は清明で高次機能障害はない.仮面様顔貌でMyerson徴候は陽性である.脳神経に異常はない.話し声は小声である.上下肢のBarré徴候は両側陰性で,指鼻試験・膝踵試験も両側で陰性.安静時振戦はなく,やや右優位だが両側性の歯車様筋強剛を認める.Romberg徴候は陰性.Mann肢位(両足を縦一直線に置く起立平衡試験の姿勢)の保持は開眼でもできない.片足立ちは左右とも数秒程度である.深部反射は正常で,病的反射はみられない.歩きはスタンスの狭い小刻み歩行で,すり足,すくみ足もある.突進現象はない.pullテストは陽性である.感覚障害はなく,Schellongテストは陰性.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

正常圧水頭症

慢性硬膜下血腫

薬物性Parkinson症候群

頻度の高い疾患

Parkinson病

Lewy小体型認知症(dementia with Lewy bodies; DLB)

多系統萎縮症

血管性Parkinson症候群

進行性核上性麻痺

大脳皮質基底核変性症

■この時点で何を考えるか?

 医療面接と身体診察を総合して考える点

 緩徐進行性の経過で,錐体外路障害を呈する疾患を考える〔症候・病態編「歩行障害」参照〕.〈p〉安静時振戦はないが, 姿勢反射障害や歩行障害があり,筋強剛と症状の左右差がある点はParkin

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