現病歴:4年前から動きの鈍さが出現した.ふるえはないがシャツのボタンがかけにくくなり,得意であった習字が下手になった.歩行開始時に最初の1歩が出にくく,猫背で,ちょこちょことした歩き方で転びやすくなった.便秘や頻尿,立ちくらみはなく,物忘れや幻視はない.
既往歴:特記すべきことなし.
生活歴:喫煙歴なし,飲酒歴は機会飲酒.
家族歴:特記すべきことなし.
身体所見:身長160cm,体重57kg,体温36.2℃,脈拍80回/分,血圧98/66mmHg,呼吸数18回/分.意識は清明で高次機能障害はない.仮面様顔貌でMyerson徴候は陽性である.脳神経に異常はない.話し声は小声である.上下肢のBarré徴候は両側陰性で,指鼻試験・膝踵試験も両側で陰性.安静時振戦はなく,やや右優位だが両側性の歯車様筋強剛を認める.Romberg徴候は陰性.Mann肢位(両足を縦一直線に置く起立平衡試験の姿勢)の保持は開眼でもできない.片足立ちは左右とも数秒程度である.深部反射は正常で,病的反射はみられない.歩きはスタンスの狭い小刻み歩行で,すり足,すくみ足もある.突進現象はない.pullテストは陽性である.感覚障害はなく,Schellongテストは陰性.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・正常圧水頭症
・慢性硬膜下血腫
・薬物性Parkinson症候群
頻度の高い疾患
・Parkinson病
・Lewy小体型認知症(dementia with Lewy bodies; DLB)
・多系統萎縮症
・血管性Parkinson症候群
・進行性核上性麻痺
・大脳皮質基底核変性症
■この時点で何を考えるか?
医療面接と身体診察を総合して考える点
緩徐進行性の経過で,錐体外路障害を呈する疾患を考える〔症候・病態編「歩行障害」参照→〕.〈p〉安静時振戦はないが, 姿勢反射障害や歩行障害があり,筋強剛と症状の左右差がある点はParkin
関連リンク
- 内科診断学 第3版/歩行障害
- 治療薬マニュアル2023/イオフルパン(123I)《ダットスキャン》
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/2 認知症
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/3 パーキンソン症候群
- 新臨床内科学 第10版/【7】歩行障害
- 新臨床内科学 第10版/2 レヴィ小体型認知症
- 新臨床内科学 第10版/3 進行性核上性麻痺
- 今日の診断指針 第8版/錐体外路症状
- 今日の診断指針 第8版/Parkinson症候群(進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症を含む)
- 今日の診断指針 第8版/多系統萎縮症
- 今日の診断指針 第8版/Lewy小体型認知症
- 今日の精神疾患治療指針 第2版/進行性核上性麻痺