診療支援
診断

部位別の身体診察:頭頸部
奈良 信雄
(日本医学教育評価機構 常勤理事/順天堂大学医学部 客員教授/東京医科歯科大学 名誉教授)

 全身を観察したのち,局所の視診に移る.頭部から爪先まで,系統だてて観察を進め,見落としがないように注意する.

頭部 head

 頭部の診察では,患者と向かい合って座り,主に視診と触診で診察をする.大きさや形,毛髪の状態を観察し,同時に運動の状態や異常運動の有無を調べる.

頭部の診察

大きさ

 同年齢の健常者に比べて,頭の大きさ(size)が異様に大きいものを大頭症(macrocephaly),逆に小さすぎるものを小頭症(microcephaly)という.

 大頭症は,水頭症(hydrocephaly),先端巨大症,変形性骨炎などでみられる.

 水頭症は,脳室内に髄液が大量に貯留して脳室が拡張し,さらに頭蓋骨縫合が離開して頭蓋骨が拡大した状態である.顔面は普通の大きさなので,頭が異様に大きく,眼がくぼんで見えて,下を向いたような状態になる〔眼球の落陽現象(setting sun phenomenon)〕(図1).先端巨大症では,頰骨・顎・上眼窩縁が突出し,耳・鼻・口唇などが肥大している.

 小頭症は,脳の発育障害などでみられる.先天性のものにFanconi(ファンコニ)貧血とAlpers(アルパーズ)病(乳児進行性脳灰白質ジストロフィー)がある.Fanconi貧血では,小頭症のほか,血球減少,知能障害,斜視,指趾低形成,色素沈着などもみられる.Alpers病では,痙攣発作,肝障害,ミオクローヌス(myoclonus),精神運動発達遅滞がみられる.このほか,胎児期での放射線被曝,風疹,トキソプラズマ症,サイトメガロウイルス(CMV)感染などでも小頭症になることがある.

 次いで,頭の形(shape)を視診で観察する.

 1個もしくはそれ以上の頭蓋縫合癒合が異常に早期に起こると,頭蓋骨が特異な変形をきたし,頭の形態に異常がみられる.これを総称して狭頭症(craniostenosis)といい,出

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