診療支援
診断

鼻漏・鼻閉
nasal discharge,nasal obstruction
藤枝 重治
(福井大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授)

鼻漏・鼻閉とは

定義

 鼻漏は,鼻汁(鼻水:はなみず)のことであり,鼻粘膜にある分泌腺と杯細胞から出た分泌液と,鼻の血管から滲み出た血漿成分の合わさったものである.腺細胞からの分泌は,副交感神経の働き(アセチルコリン)で起こり,血管からの滲み出しはヒスタミンなどの炎症性メディエーター(化学伝達物質)の作用である.炎症などで鼻汁分泌量が多くなったり,鼻汁の色・性状が変化したりして,病的な意味合いが強くなると鼻漏として認識される.さらに鼻水の性状が変化し量が増加したとき,鼻汁が後鼻孔から上咽頭へ流出し,嚥下するときに飲み込むことを自覚することを後鼻漏という.

 鼻閉は鼻がつまることである.「鼻から上咽頭にかけて空気の通過を妨げる要素が生じ,鼻呼吸がうまくいかない状態,もしくは安静呼吸状態で鼻腔を通る空気量が不十分と感じる自覚」と定義されている.病的な鼻閉とは,両側の鼻閉かいつも同じ側の鼻がつまっていることを示す.鼻閉の自覚症状は個人差が大きく,鼻腔内の状態や検査所見との乖離が認められることが多い.

鼻漏と鼻閉の生理的意義

 鼻汁である鼻粘膜の分泌液は,元来病的なものでなく,鼻腔に入ったゴミなどの異物を線毛運動とともに取り除く働きをしている.健康成人で1日約1L産生し,無意識のうちに上咽頭に運ばれ,飲み込んでいるが,健康成人では後鼻漏を意識することはない.鼻腔の通気性は一定でなく,数時間の間隔で左右が交代する.これはネーザルサイクルといわれる生理的現象である.

患者の訴え方

 鼻漏に関して患者は,「鼻が出る」「鼻水が出る」「鼻が垂れる」と訴える.そこに「汚い鼻水が」とか「粘っこい鼻水が」「サラサラした鼻水が」「水のような鼻水が」という言葉を伴う.後鼻漏に関しては,「鼻水がのどに落ちる」「のどちんこの裏に何かが付着している・引っかかっている」と訴える.

 鼻閉に関して患者は,「鼻がつまる」「鼻で息

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