診療支援
診断

胸痛および胸部圧迫感
chest pain,chest oppression
和田 洋典
(信州大学医学部内科学第一教室 助教)
花岡 正幸
(信州大学医学部附属病院 病院長/信州大学医学部内科学第一教室 教授)

胸痛および胸部圧迫感とは

定義

 胸痛とは胸部に生じる痛みを指し,胸部圧迫感とは胸部に締めつけられる,あるいは重たい感じがするといった,不快な感覚が生じることである.同じく胸部に生じる胸やけ,動悸,呼吸困難などの症状については別項で扱う.

 胸痛および胸部圧迫感は救急外来を含む外来患者の主訴として最も多く,外傷によらない胸痛および胸部圧迫感の鑑別疾患は多岐にわたり,そのなかには診断が遅れると致命的となる急性期疾患が含まれる.そのため,急性発症か否かを意識しながら医療面接を行い,痛みの性状,部位や症状の経過,随伴症状の有無を確認し,身体診察による陽性・陰性所見を参考にしてある程度疾患を分類・絞り込むことが重要となる.

 致命的な急性期疾患を見逃さない観点が重要視されることから,まず急性発症であるかを確認し,その場合は,①急性冠症候群(急性心筋梗塞・不安定狭心症),②緊急性の高い(①を除く)心肺疾患(急性大動脈解離,心膜疾患,急性肺血栓塞栓症,緊張性気胸など),③その他の臓器による緊急性の高い疾患(食道破裂など)についての鑑別が早急にできるよう,必要な検査を優先すべきである.

患者の訴え方

 胸痛および胸部圧迫感は原因となる臓器が多岐にわたる.外傷,帯状疱疹などによる体性痛であれば患者が訴える痛みの部位も明確であることが多いが,急性心筋梗塞をはじめとする内臓痛で生じる胸痛・胸部圧迫感は,ときには放散痛(関連痛)も伴い,患者が痛みの部位を答えられないこともしばしばである.このため痛みの確認時に基本となる,発症様式(onset),増悪/寛解因子(provocative/palliative factors),性質と程度(quality/quantity),部位と放散部位(region/radiation),随伴症状(symptoms associated),時間経過(time course)の

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