診療支援
診断

知能障害
intellectual impairment
長井 篤
(島根大学医学部内科学第三 教授)
小林 祥泰
(小林病院 理事長)

知能障害とは

定義

知能とは

 知能とは,①物事,環境への適応能力,②適応するために言語,数量などを操作する抽象的思考能力,③行動を身につけるための学習能力などの多面的な大脳高次機能の総体である.このなかには,認知,記憶,判断,言語,感情,性格などの精神機能が含まれる.

知能障害

 18歳未満の知能の発達過程で基準範囲に達しない場合を精神遅滞(mental retardation)または知的能力障害(intellectual disability)という.一方,一度正常に発達した知能が低下して社会生活や日常生活に支障をきたすものを認知症(dementia)という.以前使用されていた“痴呆”という用語は,2004年12月から正式に“認知症”に変更された.

認知症の定義

 記憶障害と認知機能障害が持続し,日常や社会生活に支障をきたした状態をいう.

患者の訴え方

 患者が知能低下を訴えることはほとんどない.特に乳児期や幼児期前半では他覚的にも気づかれないことが多い.老年期認知症の初期に,もの忘れや認知機能の低下,失行に気づくことがあり,書字が下手になったり,日常生活の動作がぎこちなくなることを訴えることがあるが,一般に病識は薄い.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

(図1)

 知能低下が疑われる場合,まず精神遅滞なのか認知症なのかを考える.精神遅滞をきたすものは周産期異常,家族性,代謝異常などが原因となる(表1).認知症をきたすものには脳血管障害や,Alzheimer(アルツハイマー)病のような変性疾患,脳炎など多彩で,治療により回復するものを治療可能な認知症(treatable dementia)と呼び,見逃さないようにする必要がある.

 原因疾患として主なものを表2に示す.

病態・原因疾患の割合

(図2)

 脳卒中頻度の減少により脳血管性認知症の割合は2〜3割程度に減少し,変性疾患の割合が増加する傾向

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