診療支援
診断

ショック
shock
矢崎 義行
(東邦大学医療センター大橋病院循環器内科)
中村 正人
(東邦大学医学部循環器疾患低侵襲治療学講座 教授)

ショックとは

定義

 ショックとは,生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果,重要臓器の血流が維持できなくなり,細胞の代謝障害や臓器障害が起こり,生命の危機に至る急性の症候群と定義される.日本語では急性全身性循環障害,末梢循環不全あるいは末梢循環障害といい,細胞障害が生じるため,末梢血管の虚脱,静脈還流の減少,心拍出量の低下,組織循環能力の低下などの循環機能障害を呈する.

 収縮期血圧が90mmHg以下の低下を指標とすることが多いが,明らかな血圧低下を認めないこともある.

患者の訴え方

 ショックを患者自ら訴えることは少なく,不眠,せん妄,不穏,全身倦怠感,四肢冷感,頻呼吸,発汗などが非特異的な訴えである.急な不穏の発生や意識の変化があった場合は,ショックを疑う必要がある.

 ショックは急速に進行する病態であり,必要に応じて早期に治療介入を行わないと,重篤な状態に陥る可能性が高い.患者の訴えがなくなり,意識障害が進行する前に組織灌流の低下状態の有無を評価して適切な介入が必要である.

ショックの頻度

 ショックによる循環障害の要因により,その頻度は異なるが,米国では毎年100万人以上の人がショックのために救急外来へ搬送される.

 急性心筋梗塞による心原性ショックを呈する頻度は,発症時期からの時間,初期治療法によって異なるが,5~15%で,再灌流療法が遅延した場合には致命率が70~95%までに達する.

 急性肺血栓塞栓症は突然死をきたす重症疾患の1つであるが,これによる閉塞性ショックを呈した症例は30%と高く,死亡率は14%であり,診断の遅れや見逃しが生命にかかわることが多い.

 アナフィラキシーショックの場合,院内で経験しうる状況として,造影剤を使用する放射線検査(造影CTや血管造影)の際に起こる.非イオン性造影剤の場合で,重篤なヨードアレルギーをきたす頻度は0.04%,ショックに至る頻

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