診療支援
診断

発熱
72歳 女性
松村 正巳
(自治医科大学地域医療学センター センター長/地域医療学センター総合診療部門 教授)

現病歴:5週前から夕方から夜にかけて38℃前後の発熱を認めるようになった.4週前に近医を受診したが診断はつかず,非ステロイド性抗炎症薬が処方された.内服すると解熱するが,悪心を伴うようになり内服をやめた.3週前からは両足先にしびれ感が出現し,徐々に足関節まで上行した.さらに両足に発疹が出現した.1週前からは左環指〜小指のしびれ感も出現し,受診した.

既往歴:特記すべきことはない.常用薬はない.

生活歴:喫煙歴なし.飲酒歴は機会飲酒程度.

家族歴:父親に結核の罹患歴あり.

身体所見:意識は清明.身長149cm,体重38.0kg,体温37.9℃,脈拍92回/分(整),血圧132/72mmHg,呼吸数16回/分.眼瞼結膜は貧血様である.心音と呼吸音とに異常はない.腹部は平坦・軟で,肝・脾を触知しない.両足背に触れる紫斑を認める(図1).左尺骨神経支配領域に触覚と痛覚との低下を認める.両足関節から足先までに痛覚,触覚,振動覚および位置覚の低下を認める.下肢の筋力は両側の前脛骨筋と腓腹筋が4/5に低下している.腱反射は,上腕二頭筋反射(+/+),上腕三頭筋反射(+/+),膝蓋腱反射(−/−),アキレス腱反射(−/−),Babinski(バビンスキー)反射(−/−)である.

【問題点の描出】

既往歴のない72歳女性.慢性経過の発熱と亜急性経過の多発性単神経炎と足背に触れる紫斑を認める.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・血管炎

・サルコイドーシス

・アミロイドーシス

・慢性炎症性脱髄性多発根神経炎

頻度の高い疾患

・糖尿病

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 慢性経過の〈p〉発熱からは,①感染症,②自己免疫疾患,③悪性腫瘍,④医原性(薬物)について考慮する.患者に常用薬の服用はない.次に〈p〉発熱以外で診断へのヒントとなる症状・徴候に着目する.上記のとおり〈p〉多発性単神経炎の

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