現病歴:X年8月10日,朝から咽頭痛を自覚した.市販の感冒薬を内服したが改善しないため,翌11日午前中に受診となった.食欲は良好であり,咳嗽や嚥下困難はない.
既往歴:特記すべきことはない.
生活歴:大学生.喫煙歴なし.機会飲酒.海外渡航歴なし.
家族歴:同居の弟が3日前から同様の症状がある.
身体所見:意識は清明.身長172cm,体重75kg,体温36.8℃,脈拍88回/分,血圧102/66mmHg,呼吸数14回/分,SpO2 97%(room air).咽頭に発赤を認めるが白苔の付着はない(図1)図.扁桃の大きさに左右差はない.口蓋垂の偏位はない.頸部リンパ節を触知しない.心音と呼吸音に異常を認めない.腹部は平坦・軟で,肝・脾を触知しない.
【問題点の描出】
これまで健康な22歳の男性.咽頭痛で受診.同居家族が同様の症状がある.バイタルサインに異常はない.咽頭に発赤を認める.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・急性喉頭蓋炎
・扁桃周囲膿瘍
頻度の高い疾患
・ウイルス性咽頭炎
・細菌性咽頭炎
この時点で何を考えるか?
医療面接と身体診察を総合して考える点
咽頭痛で受診した患者に対しては,緊急的な処置が必要となる疾患の可能性について検討する.
今回の患者の場合,咽頭痛発症2日目の受診であり急性の経過である.〈除〉気道狭窄を示唆するような呼吸困難や喘鳴などの症状はなく,バイタルサインも異常を認めない.急性喉頭蓋炎を示唆するような所見はないため,緊急で気道確保などの処置が必要な状態ではないと判断し,医療面接,身体診察,検査を進めていく.
咽頭痛の多くは咽頭および喉頭の感染症によって生じる.重篤な咽頭および喉頭の感染症の可能性を考慮し,咽頭痛以外の症状(呼吸困難,喘鳴,嚥下困難など)の有無を確認する必要がある.また,身体診察でも開口障害,嗄声,扁桃腫大の左右差,口蓋垂の偏位などの所見をていねいに確認