診療支援
診断

喘鳴,労作時呼吸困難
73歳 女性
皿谷 健
(杏林大学大学院医学研究科臨床教授・呼吸器内科学)

現病歴:1週間前に鼻汁,咽頭痛あり.そのあとから労作時呼吸困難,喘鳴を自覚し来院.

既往歴:特記すべきことはない.

喫煙歴:25〜65歳,20本/日(40pack-years).

職業:粉塵吸入歴なし.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:バイタルサイン;SpO2 95%(室内気),脈拍81回/分,血圧138/80mmHg.全肺野でwheezesあり.心音;Ⅱp音亢進あり.内頸静脈圧12cm.両側下腿に圧迫浮腫(pitting edema)あり(slow edema).ばち状指あり.

review of systems:軽度の喀痰,咳嗽あり.食欲なし.数日で3kgの体重増加あり.夜間発作性呼吸困難なし.胸膜痛なし.

【問題点の描出】

感冒を契機に出現した喘鳴,呼吸困難感を呈する重喫煙者の73歳女性である.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・肺炎

・気胸

・肺塞栓

・胸水貯留

頻度の高い疾患

・慢性閉塞性肺疾患(COPD)

・気管支喘息

・心臓喘息/心不全

・副鼻腔気管支症候群

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 喘鳴を呈する患者は労作時呼吸困難を伴っていることが圧倒的に多い.喘鳴で頻度の高い疾患はCOPDの急性増悪気管支喘息発作心臓喘息などがある.呼吸困難は急性の経過であるが,肺塞栓気胸を疑うような胸膜痛は認めない.両側下腿のslow edemaと内頸静脈圧の上昇,Ⅱp音亢進は肺性心を反映している可能性がある.気管支喘息の既往はなく,40pack-yearsの喫煙歴からCOPDのリスクがあり,ウイルス感染(鼻汁,咽頭痛)を契機としたCOPDの増悪を呈した可能性がある.ばち状指はCOPD単独では生じにくく,心不全肺癌の合併を疑うサインである.

診断仮説(仮の診断)

COPDの急性増悪

気管支喘息

心臓喘息/心不全

肺癌

・肺塞栓

・気胸

必要なスクリーニング検査

 胸部X線,

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