診療支援
診断

呼吸困難
61歳 男性
多田 篤司
(Department of Cardiovascular Medicine, Mayo Clinic Research fellow)
安斉 俊久
(北海道大学大学院循環病態内科学 教授)

現病歴:呼吸困難を主訴に前医を受診した.心不全の診断で入院となり,経静脈的な血管拡張薬と利尿薬の投与により,心不全の代償化が得られた.その後,以前より内服していた降圧薬(カルシウム拮抗薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)を再開していたが血圧コントロールは不良であり,心不全ならびに難治性高血圧の原因精査のために当院紹介となった.

既往歴:高血圧症.

生活歴:喫煙歴なし,飲酒歴は機会飲酒.アレルギーはなし.

身体所見:意識は清明.身長170cm,体重81kg,体温36.2℃,脈拍80回/分(整),血圧149/89mmHg,呼吸数14回/分.頸静脈怒張なし.心音異常なし.肺野清.下腿浮腫なし.末梢動脈触知良好.

【問題点の描出】

長期間の血圧高値が原因で発症したと考えられる心不全である.二次予防のために厳格な血圧コントロールを行うことが重要と考えられ,高血圧の原因を鑑別することが必要である.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・二次性高血圧

 ・原発性アルドステロン症

 ・Cushing(クッシング)症候群

 ・褐色細胞腫

 ・腎血管性高血圧

 ・睡眠時無呼吸症候群

頻度の高い疾患

・本態性高血圧

・白衣高血圧

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 高血圧がどういう性質であるか医療面接で確認することが非常に重要である〔症候・病態編「高血圧」の表3参照〕.

‍ 〈p〉高血圧がいつ頃からどの程度であったかを尋ね,高血圧の罹病期間やその程度を確認することが重要である.同様に,自覚症状についても尋ねる.さらに,これまでの内服歴を含めた治療経過についても確認する.

 その結果,本患者の場合は以下のような返答が得られた.

 「40歳代の頃から高血圧といわれていた.定期的に降圧薬の内服を行っていたが,血圧が十分に下がりきらないことも多かった.今回の呼吸苦が初めての自覚症状だったと思う」

 次に,高血

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